コラム

デザイン住宅外観あれこれ

更新日:2020年3月17日

石川淳建築設計事務所で作っているシンプルでミニマルな住宅の外観デザインを解説。
2001年にY.ケンネルを発表してから「白いシンプルなイエ型の外観」を作り続けています。
その斬新な「普通さ」は建築専門雑誌や一般誌、テレビ・新聞から注目され今に至りますが、2020年現在で80棟以上が竣工しています。このコラムでは各住宅を設計着手した順にでデザイン手法を解説してゆきます。


作品名「ハコノオウチ」
3者コンペで選ばれた我々の案は、2階建てに中間階納戸をいれた3層です。しかし、他社2案は3階建てだったため、ファサードに非常用進入口が開いていました。

施主は「コルビジェの様なデザインの家」を望んでいた事から、白い箱に黒の「横連窓」のイメージを実現するため、進入口のいらない2階建ての案としました。間口の狭い縦長のフォサードを整えるため、1層目はグレー色のセメント板とし、白のキューブがピロティ的に浮いているように見せています。

ハコ型の四角い住宅はこれま数件作っていましたが、住宅専門誌に発表できる機会を得た事から、以後箱型の家に「ハコノオウチ」と名付ける事にしました。


作品名「OUCHI-15」静岡の二世帯住宅
設計のご依頼を2008年の秋にいただきましたので、設計期間はOUCHI-13の5ヶ月後になります。
道に長く接した敷地に綺麗な切妻形をどのように配置するか考えた末、二世帯それぞれの三角屋根を白い塀状の外壁の左右に配置するシンプルな住宅デザインとしました。

スキップフロアなど複雑な事を使わずに平面的に課題を解決した住宅ですが、外観からはわからない中庭や中庭にある「小屋」など、他の家と違った独特な住宅に仕上げることができました。
はやり、敷地条件というのは建物の様子を決める大きな要因になると、今更ながらに感じた作品です。


作品名「OUCHI-13」愛犬と暮らす家
OUCHI-02の設計が2007年8月からで、このOUCHI-13の設計時期は2008年5月からです。
この期間の間にOUCHI-12、OUCHI-09、OUCHI-11 と設計を行っていました。OUCHI-12、OUCHI-09、OUCHI-11 は左右対称の切妻型デザインの家になっていますが、OUCHI-13は北側斜線制限のため、写真の左側から斜めに高さ制限がかかり、そのまま切妻にすると天井高さが足り無い空間になってしまいます。
そのため、左右非対称の形にして室内のボリュームを大きく撮る形式でデザインしました。
ガレージにシャッターを付けるご希望があり、シャッターと玄関ドアを統合した開口デザインとして、さらに大きなガラスFIX窓を2階リビングに設けて外観に個性を与えました。
また、ファサード面を中央で左右に折り曲げており、光の陰影で立体的に見える様な凝った設計になっています。


作品名「OUCHI-02」鳥取のミニマルデザインの家
雑誌で当事務所の作品をご覧になった鳥取県のお施主様から設計のご依頼を頂きました。
ご依頼は2007年の8月です。耐震偽造問題などで建築確認が停滞した事から、先に設計開始したOUCHI-03〜10を追い越して完成しました。
シンプルデザインの住宅は今(2018年)でこそ流行っていますが、当時は石川淳建築設計事務所が先駆けて作っていましたので、遠方からもお問い合わせが多かったものです。

三角屋根に大きな正方形の開口、という外観デザインのアイデアは、実は2004年に考えていました
建物外壁のドアを開けて階段を上がると正方形の開口の中に出てきて、そこから2階のリビングへ入る動線計画で、このアイデアをいつか実現したいと温めていたところ、鳥取からのご依頼で、このアイデアにピッタリの敷地だった事から実現しました。
リビング前の3本引き戸を玄関ドアにする案は後に完成するOUCHI-27に引き継がれます。


作品名「OUCHI-30」光を楽しむ家
2007年7月に建築家マッチングのザ・ハウスさんでご紹介頂きスタートした計画です。
前作のOUCHI-04と同時期にデザインスタディを行っていた事も有り、ファサードを縦に切って開口を設ける方法を両作品に採用しました。
OUCHI-04では木のルーバーですが、こちらはファサードにタペストリーガラスを用い、視線をカットしつつリビングに光を取り入れる工夫をした外観です。
外観デザインのもう一つの特徴、RCの塀ですが、地下1階+地上2階のため、基壇をRC工事で行います。
そのRCの立ち上がりを建物塀のように見せてガレージの開口を納めています。
さて、OUCHI-04から番号が飛んで30番となりましたが、設計途中で、お施主さまが海外転勤となって計画を一端延期したためです。
3年ほど休止して、ご帰国後に再開して完成したため、30番の番号となりました。


作品名「OUCHI-04」中庭のある家
2007年7月設計ご依頼をいただきました。
5月に初回プレゼンを行ったアトリエのある家を実施設計しつつ、この家の提案書を作成していました。
縦にバサリと木ルーバーで中庭を目隠しする案を思いつき、三角屋根の頂点から黒と白に割るデザインです。
室内の構成はお打ち合わせで変更調整を行いましたが、外観については初めの提案書のままで進みました。
潔い縦割りのデザインは、建物の屋根角度と目隠しの壁角度を合わせる事が施工上ポイントで、結果上手く作る事ができました。


作品名「OUCHI-03」アトリエのある家
2007年の3月に設計ご依頼を頂いたイエ型デザインの家で、斜め窓の家のご依頼が2月で。こちらはその1ヶ月後の3月でした。
完成はこちらが追い抜いて先となり、作品番号が03です。
絵画アトリエを内包することから大型の絵の搬出入の楽な背の高い玄関ドアをデザインに取り込みました。
正面の正方形の窓は道路対岸の隣地の植栽を借景として切り取る窓で、正方形の大きな窓と細高い玄関ドアの組み合わせがこの家のデザインのポインです。

OUCHI-06
作品名「OUCHI-06」斜め窓の家
2007年の2月に設計のご依頼を頂きました。
イエ型デザインの住宅もこのご依頼で10戸目の時期でした。
お施主様のご依頼時の聞き取りで、「ガンダムのフィギュアが好きで家に飾りたい」という事柄がありました。
敷地は眺望の良い高台の立地なので景色を見渡せる横長窓を考えていました。しかし、お施主さまからのキーワード「ガンダムフィギュア」から「モビルスーツのモノアイ」が頭にうかびます。その結果、細長い窓をモノアイに見立て、斜めに下から空まで見上げるようなイメージの外観スケッチができました。
さらに単にデザインだけでなく斜めに切り込む窓は、足元の谷間の景色から空までリニアに眺望が獲得でき、さらに階段にそってスリット窓が上がって行く内観を作る事ができました。

ouchi-05
作品名「OUCHI-05」
2007年の1月、前出の「T-a2」と同じ時に設計ご依頼を頂いた住宅です。
T-a2はブドウ畑に、こちらOUCHI-05は住宅地に計画されたものですが、どちらも外壁の窓を最小限にして白い壁とシンプルな輪郭で見せるようにデザインした住宅でした。
このOUCHI-05は白いイエ型の外観に、留守番猫のための外部に出られるインナーバルコニーを正方形に開口してファサードのアクセントにしています。
必要な窓は裏側の南面と天窓で採光して、道路面はミニマルにまとめたデザインです。
進行中のプロジェクトそれぞれの住宅に固有の顔を考え、シンプルな作りの中に色々な可能性を探しています。

i-a4
作品名「i-a4」
2006年の12月、OUCHI-07の設計ご依頼の1ヶ月後にご依頼いただきました。
ASJ(アーキテクツスタジオジャパン)の郡山の住宅相談会へお施主様ご夫婦がいらして初めてお会いしたのですが、実はネットで当事務所を既に見つけていただいていたそうです。設計後に敷地が変更になったため、写真左のグレー色の壁が15mほど伸びる予定をバッサリ切ったデザインに変更されました。
外観デザインは同時期にデザインの進んでいたOUCHI-07と共通点のある「基壇の上に切妻ボリュームを乗せる」という形です。
こちらの方は郊外型でリビングは1階で開放的。OUCHI-07は都市型なのでリビングは3階に配置、という違いがありますが共に白のボリュームが1階に乗っかっている形です。

ouchi-07

作品名「OUCHI-07」
OUCHI-10の設計ご依頼の1ヶ月後、2006年秋にご依頼いただいたのがこのOUCHI-07です。

黒の箱の上に白い切妻のボリュームをずらして乗せたデザインで、ご近所のおばさまに「素敵なおウチねえ〜」とお言葉を頂きました。
ずらした切妻ボリュームの下は庇の代わりになり、1階の黒の箱の中の趣味室のドアを開放するとパーキングのスペースと一体で使えます。

箱がズレながら積み重なっているデザインの家は雑誌上でもよく見かけますが、そのアイデアを石川淳流にアレンジしてデザインしています。
そうは言っても写真左側からかかる北側高さ制限で屋根を斜めに切り取られる事を考慮した実用的なデザインでもあります。

さて、このOUCHI-07のお施主様は家づくりを始めた頃に自転車で住宅展示場へ向かっていたそうです。
その途中に住宅地に迷い込み、そこで偶然当事務所で設計した2005年竣工の「G-n1」を発見。
これは好みだと思って頂いているところに同時期にG-n1が雑誌に掲載されたのをご覧になられて設計ご依頼をいただきました。

OUCHI-10

作品名「OUCHI-10」
完成発表順ですと、OUCHI-01の次はOUCHI-02なのですが、実はOUCHI-01の数日後に設計ご依頼を頂いたのがこのOUCHI-10です。
予定していた工務店さんが交代する事になり、着工が遅れて完成が2009年になりました。

白い外観は今までの流れですが、庭の緑と池を見渡すために足元には幅広く背の低い窓を配置。
緑豊かな庭に面するものの、対面に工場があり、その建物が見えないように低い窓を連続して取ったデザインです。
また、イエ型のボリュームは幅と高さのバランスから輪郭を決め、はみ出したボリュームは横に黒い箱を添える、というデザインの外観としました。

OUCHI-01

作品名「OUCHI」(2006年設計ご依頼)
OUCHIという名前のシリーズはここから始めました。

それまではお施主さまのご要望や敷地条件が建築の形を決めると考えて、それぞれに記号のように名前を付けていました。
しかし、だんだんと、「白いおうちのデザインが好きでお願いしたい」といったご依頼が増えてきて、内容はおまかせ的なご依頼が多くなります。
そうすると、個別に名前を付けるよりも、シリーズ的な名前の方がわかりやすいと考え、この「OUCHIシリーズ」の名前となりました。

以前、Y-SOHOの前を通っていた幼稚園児たちが「素敵なオウチ!」と言ってくれたのを思い出し、子供でもすぐわかる「オウチ」を新建築住宅特集でのこの家の発表名にしました。

さて、外観デザインはシンプルな家型のアイコンを単純に壁を切り取って入り口と窓にする、というミニマルな考え方でまとめました。
室内は二世帯住宅なのですが、外にその気配はありません。

屋根の角度は北側斜線制限をかわして、 スケッチから直感的に決めていて、わかりやすい切りのよい角度ではありません。
60度や45度の切りのよい角度で作ると、どこか愛嬌を感じないのです。
完璧な美人よりも、少しはずした可愛い人の方が好き。といったイメージでしょうか。

T-a2

作品名「T-a2」(2007年設計ご依頼)
こちらも、Tはお施主様のイニシャルで、aはお施主様を紹介いただいたプロデュース会社「ASJ」のイニシャルで、2はこの仕組みで2番目に竣工したという番号です。

S-a3の設計ご依頼とT-a2の設計ご依頼の間にはOUCHI-01、10、07、i-a4 の4件の設計が挟まっています。
これら切妻型のデザインを数件進行中であったことや、片流れが対峙するS-a3を設計中ということもあり、ここではハコ型にシンプルに見せてみたいという気持ちが起きました。

それというのも、敷地は細長く奥行き110m、幅23mあり、長手方向の北隣地は見晴らしの抜けたブドウ畑という立地。
ミニマルな白い箱が緑のブドウの木々のじゅうたんの上に浮いている画像がすぐに頭に浮かびました。

将来、ご自身の事務所などを増築する事も視野にいれたい、とお施主様のご希望があった事から、1階部分に壁を立て、外構の塀的に敷地の長手方向に伸ばして、その上に白いハコを乗せたデザインとしました。この塀の部分(グレー色の部分)にそって、将来増築を行えば、統一されたデザインストーリーの中で建物の増殖が可能と考えた訳です。

北側のブドウ畑側は1階の寝室の窓を開いていますが、2階は潔く窓を設けず、「白いハコ」が浮いているデザインを貫いています。

S-a3

作品名「S-a3」(2006年設計ご依頼)※上写真
記号のような名称はG-n1から付け始めたのですが、同じ2006年に設計ご依頼を頂いたOUCHI-01が完成するまで続きます。

さて、S-a3のSはお施主様のイニシャルで、aはお施主様を紹介いただいたプロデュース会社「ASJ」のイニシャルで、3はこの仕組みで3番目に竣工したという番号です。
この翌年設計ご依頼いただいた「T-a2」の完成が「S-a3」を追い抜いて竣工しましたが、設計に着手した順番はこちらが先になります。

二つの白い片流れを対峙させて、その間に中庭を設けたデザインの住宅です。
住宅展で、白いシンプルな外観の住宅写真パネルを見ていただき、ご依頼を頂きました。
前作の「T-3G」や「H×4」は雑誌発表前の時期でしたので、こちらのお施主様がご覧になったのは「Y.SOHO」や「G-n1」で、そのデザインイメージでご依頼を頂きました。

水田に面して開けた場所で、外観がとても目立つ敷地でした。
そのため、距離を取って見た時に分かりやすくスッキリと、また彫刻的に見えるような形を提案しました。
1回目の提案は2006年7月で、この時点で現在の外観が形作られていました。
室内のプランを風水を確認しながら進めるご要望があり、間取り図をお寺さんへ提出して見てもらい、その都度修正を加えるという作業を繰り返しながら進みました。

数回の間取り打合せを繰り返して2007年3月に現在の形に決定して実施設計をスタート、2008年6月に完成しました。

左のボリュームがリビングと玄関のあるエリアで、黒いデッキの中庭を挟んで右側が寝室、サニタリーなどの配置です。
黒の縦スリットは玄関のポーチで、書斎コーナーの小さな窓のみ水田の方向に開いています。

甲府盆地に位置するこの敷地は常に写真横の方位から強めの風が吹き下ろしてきているという条件から、中庭を建物で囲んで風を防ぐ事を意図しています。
見た目だけでなく、合理性や必然性からデザインを導くのが住宅設計と商業建築設計の大きな違いです。

T-3G

作品名「T-3G」です。(2005年設計ご依頼)※上写真
これもお施主様のイニシャル、建物幅3m、ガレージを内包 から名付けました。

Y-SOHOが掲載された雑誌LIVESをご覧になられたお施主様からの設計ご依頼でした。
敷地間口が4mしかないため、建物芯々で3mです。1層目に小さめの愛車を納めるガレージがあり、引き分け式の引き戸を作り、黒く塗装して玄関ドアとしても利用。
大きめのガラスFIX窓から採光をを取るようにデザインしてあります。

基壇に黒とガラス。その上に切妻型の白いボリュームを載せた外観デザインは今までの流れ「Y.ケンネル→Y.SOHO→T-3G」と受け継がれています。
ちなみに設計ご依頼時は「G-n1」はまだ新建築のみに発表していて、LIVESや住まいの設計への掲載は2006年になり、お施主様の中のイメージは「Y.SOHOのような家」をイメージされてお問い合わせを頂きました。

ここでは細長い窓を階をまたいで取りつけるデザインを行い、窓をまとめてスッキリ見せています。

H×4

作品名「H×4」です。(2005年設計ご依頼)※上写真
お施主様のイニシャル、建築場所の頭文字、旗竿敷地のH、ハウスのHを4つかけました。

Y-SOHOが掲載された女性雑誌「グラツィア」をご覧になられたお施主様からの設計ご依頼でした。
外観は写真のように細高く、OUCHIシリーズでもハコノオウチシリーズでもない形ですが、そのデザインテイストはY.ケンネル→Y-SOHO→H×4とご依頼のリレーが受け継がれました。

敷地は道路に巾2.5mほど接していて、その路地状の部分に建物の玄関を突きだしてデザインになっています。
敷地両側に50センチづつ離れを取ると、建物の玄関の巾は1.2mほど。
高さを4mほどに作り、下半分を玄関ドア、上半分を明かり取りの窓としました。

大きな窓と玄関ドアだけの構成ですが、窓の部分をドアよりも少し持ち出して、陰影を付けています。
白く四角い額縁で囲んでその中に黒のドアや黒の窓枠を付ける手法は同時期に設計を進めていた「Y-a1」と共通です。

Y-a1

作品名は「Y-a1」です。(2004年設計ご依頼)※上写真
これまでに完成した三角屋根の家達は、みな前作をメディアでご覧になって同じデザインを欲していらしたお施主様の住宅でしたが、この家のお施主様のご希望は片流れの屋根のご希望でした。そこでハコ型の片流れのBOXが2つ組み合わさったような形を提案しています。
南に大きく開いた窓には十字型に化粧梁を取りつけ、日よけのシートなどを取りつけやすいようにデザインし、アクセントとしています。
外観はお施主様と打合せながら作り上げた石川淳事務所では異端のデザインですが、白の外壁に黒色を取り入れるスタイルは他の住宅と共通したデザイン手法としました。

M-n1:2

作品名「M-n1/2」です。(2004年設計ご依頼)※上写真
Mは施主のイニシャルでn1は前作G-n1の「庭付一戸建て」を引用。1/2というのは、将来建物に増築を施し二世帯住宅へ変化させる事を前提として設計していたので全体の1/2という意味で付けました。
やはり、Y.ケンネルとY.SOHOの掲載誌をご覧になられ、その潔いミニマルデザインに共感を頂き、前作のG-n1と同時期に設計のご依頼を頂きました。

設計時は敷地は大きなお屋敷の庭の一部で、周囲が開発されることは決まっていましたが区画の線引きもされる前でした。
そのため、どちらに窓を向ければ良いのやら・・という場所でした。ただ、桜の木が一本生えていて、これは新築時、増築後もポイントにしましょう、という考えで作りました。
外観は切妻形をベースにし、将来増築した時にガラスを外して廊下でつなげる部分を黒く突きだしたデザインとしました。

M-n2:2

こちらは2013年に増築棟が完成した後の写真です。
右側の1階に親世帯リビング、2階に子世帯寝室を配置して、ここからは桜が正面に見えるように配置されます。
1期工事の棟は1階に親世帯多目的室と2階に子世帯リビングがあり、それぞれのサニタリーは1階にありますが、2住戸の動線が交錯しないように竣工時から2つの階段を作ってありました。

白と黒の外観のこの家も前作3つと同じように住宅雑誌の取材を受けました。
さらに、大手屋根材メーカーPR誌の取材も受けた事から、全国の工務店さんに知れ渡り、現在大流行している「白と黒のデザイナー建て売り住宅」を生み出す元になったようです。

G-n1

作品名「G-n1」です。(2004年設計ご依頼)※上写真
Gは施主のイニシャルで、nは中庭の略 1は1戸建て 「Gさんの中庭つき一戸建て住宅」といったところ。

お施主様の希望は中庭のある家でした。
そんな事もあり、中庭に面する窓をメインとして、ファサードの窓を整理しました。
イエ形のデザインですが、実は左の隣地から高さ制限が斜めにかかっています。
その斜めのラインなりに屋根を勾配させ、中心で対称型に右に折り返した切妻屋根としています。

正面の大きな正方形の開口は、「玄関ポーチ」「玄関ドア」「玄関への採光窓」「2階予備室の窓」を一つの形にまとめた物で、シンプルでミニマルデザインの家としています。

切妻屋根は屋根の勾配次第で「洋」にも「和」にも変化するおもしろい形です。前作のY.ケンネルは勾配緩めの和の雰囲気、Y.SOHOは勾配がきつ目で洋の雰囲気でしたが、こちらG-n1では和にも洋にも見える勾配だと思います。
飾りを付けてデザインをして、和や洋に見せるのではなく、屋根の輪郭や窓の開け方で表現する極めてシンプルで潔いデザインとしています。

お施主様が名付けたこの家の名前は「アイコンハウス」。
グラフィックデザインの仕事をしていることから、過分な意匠を削ぎ落としたY.ケンネルやY.SOHOを雑誌でご覧になって頂き、共感をいただき、設計のご依頼をくださりました。
完成後の雑誌取材でのインタビューで、パソコン画面のアイコンのようなシンプルさがとても気に入っているとの事でした。

Y.SOHO

Y.SOHOという住宅です。※上写真
Y.ケンネルが表紙を飾った雑誌Penをご覧になった雑誌編集者と装丁家のご夫婦からの設計依頼を頂いてデザインした家です。
デザインをやり過ぎず、シンプルに、かといって、個性はキチンと主張する。そのような外観に共感を持って頂いたようで、テイストは同じようにしてほしいとのご要望でした。
さて、外観のデザインを考える上での大きな課題は、・コストを絞るために特殊な窓は採用できない・道路向かいにはアパートの窓があり、道路も狭い・南道路側に窓を大きくとらざる負えない、で、これらをクリアーすることが必要でした。
そこでこの家で採用したアイデアは、普通の引き違い掃き出し窓を1階と2階に取り付け、その手前に目隠し壁を立ち上げたベランダのボックスを貼り付け、それと呼応するように玄関ドアを彫り込むという方法。大きな黒の出っぱりと小さな黒の引っ込んだ玄関。この対比をシンプルな切妻の中に納めて、ちょっとユーモアを見る人に感じてもらえるようにしました。
2階はリビングにつながるベランダで、1階は奥様の仕事室につながる半屋外の「喫煙室」的場所となりました。
完成した家の外観は、「飲み屋」のようでもあり、道行く人が覗き込んで行く事もあるそうです。
また、近所の幼稚園のお散歩コースになっていて、園児達が「ステキなオウチ!」と言っていましたよ、と奥様からお聞きしました。

Y.ケンネル

※上写真
このY.ケンネルは2001年の春に設計を行い、同年着工して2001年秋に完成しました。当時の私はアトリエ設計事務所へ勤めていましたが、友人からの設計依頼でこのY.ケンネルを本業の傍ら設計しました。

1000万円代でフリープランの建て売り住宅の契約でスタートした事から、複雑な形は契約上も予算上もできません。そうは言っても、初めて自分の名前で設計する住宅ですから何か問題提起ができる建築を作りたいと考えていました。

1980年代から1990年代は住宅を住宅に見せないようなデザインが注目されて、変わった材料を使ったり、外壁に色々な皮膜を付けたりといった建築が注目されていたように思います。私自身も流行のポストモダン、デコン、等々を見ながら設計作業を行っていました。

そのような流れの中で、商業施設でもない住宅建築には不必要な部分が多いように思い、それらすべてを削ぎ落とした「イエ」の原点に立ち返った建築を自分の作品1号として作りたいと考えました。

造成地の最上段に敷地はあります。
手前の敷地にもすぐに隣家が建つことから、正面に余計な窓はつけず、隣家の屋根越しに景色を取り込む窓を一つだけ開けました。屋根の形は木造建築で最も合理的に作る事ができる切妻形とし、無色(白)の塗装で仕上げたイエ形のボリュームは子供が画く家の絵のようなシンプルなデザインになりました。

出来上がったこの家は専門誌の新建築住宅特集に掲載され、それが呼び水になって雑誌、テレビ、新聞と多くのメディアに掲載されました。
切妻形の家の流行はかつて建築界ではあったのですが、このY.ケンネルが今の時代の流れの一つのスタートになったように感じます。

さらに、白と黒の仕上げの使い分け。これは先人の建築家が行った手法を自分なりに取り入れた結果ですが、雑誌PENの表紙にY.ケンネルのインテリアの白と黒の塗り分け写真が使われたことから一気に商業マンション、建売り住宅、ハウスメーカーが「白黒」を引用するようになったようです。

Y.ケンネル内部

株式会社石川淳建築設計事務所 東京都中野区江原町2-31-13第1喜光マンション TEL 03-3950-0351