オランダ建築旅行
2017.10.11

2017年10月11日更新
2016年の6月にオランダの建築を見るために1週間ほど出かけました。
その建築旅行記です。


さて、オランダで見る建築をリサーチするにあたり、アマゾンで検索したところ、下記の本がみつかりました。

さて、この本を読んだところ、オランダには派手なOMAやMVRDV以外にも沢山の近代建築が有ることをしりました。


アムステルダムの中心から電車ですぐの場所にあり東京駅~羽田よりもちょっと近い距離感です。
飛行機を降りると、まず荷物検査と全身検査がありました。ベルギーのテロの影響と思いますが、結構入念にしらべます。
上記写真はそのエリアを出て、空港のチェックインエリアの様子です。身体検査後なので感覚としてもう外に居るように感じてしまいましたが、このエリアから下階の入国審査のエリアへエスカレーターで下りて、パスポートチェックのゲートを抜けて駅のエリアへ移動しました。

途中で見えて来るのがこの「ING-HOUSE」です。2002年竣工のING銀行の社屋です。
宇宙船のような形ですが、高さ制限かなにかで形が決まってるのかな? と想像してしまいます。
アドレス:Amstelveenseweg 500, 1081 KL Amsterdam,

ここからING-HOUSEに向かって10分ほど歩き、そのまま北上してオープンエアスクールを目指しました。

フェンスも簡単なサッカーのゴールネットみたいな柵です。
かなりびっくり。

ヨハネス・ダイカー設計で1930年竣工です。手前が幼稚園で、ピロティをくぐって入った先は小学校とのこと。この日は時間が遅いせいか、やっていませんでした。
アドレス:Cliostraat 40, 1077 KJ Amsterdam,
http://www.openluchtschool1.nl

この後も度々目にしますが、近代の歴史的建築物にこのような説明看板があるのをよく見かけます。
日本も導入すると良いですね。

残念ながら入れなかったので写真は山縣さん著の「オランダ近代建築」からどうぞ。


途中の色々なアパート(日本風に言うマンション)のエントランスがとてもチャーミングです。
個々のポストをデザインに取り込んだり、長屋式に玄関ドアが沢山あるものなど個性的です。


写真は南のアムステル運河の側のファサードで、「この建物でいいのかなあ?」と半信半疑ながら正面へ歩いて進みます。


開いているところがあったので見てみると木造の階段
緑色の階段とは、私なら思いつかないカラースキーム。
レンガと緑色は意外と合う色合いという事を学びます。

1922年竣工 設計 M・デ・クラーク& P・L・クラーク
94年前に竣工したというのに、普通に使われていて、また外観も変な今風のリニューアルはされていません。

第一次世界大戦と第二次世界大戦の間に作られた低所得者向けの集合住宅ですが、むしろ高級感も感じさせる雰囲気がありました。


大味な内開き窓のイメージのあるヨーロッパですが、とても繊細です。

オランダでは車道と歩道の間に自転車用の道路がはさまっているところが多いですが、こちらは人間用の信号スイッチ。自転車用は自転車の絵がかいてあります。
押すと、機械的な音がジーコジーコと鳴って可愛らしいです。


通勤時間帯ですが、空いています。ガラスとスチールワークがとっても綺麗。

改札は無くて、スイカ式カードを触れる機械が立っているので、そこにタッチして出入りします。

朝の通勤時間帯にちょっとした余裕が感じられて素敵な光景です。

国際見本市場などを建設中で、再開発まっただ中の様子です。
観光地のユトレヒト旧市街はこの駅舎の反対側の北口側です。

ユトレヒトと言えばディック・ブルーナが描いた日本名うさこちゃん・英名ミッフィー・オランダ名ナインチェ・プラウスです。日本人がミッフィー参りに沢山来るようです。
早速コインロッカーにバックパックを預けてタクシーに乗ってシュレーダー邸へ向かいます。

アドレス:Prins Hendriklaan 50, 3583 EP Utrecht,

http://centraalmuseum.nl/en/visit/locations/rietveld-schroder-house/
記名されたEチケットを印刷して持参する方式で、予約時に日時をして、それに会わせて訪れました。
シュレーダー邸は実は左のアパートに接しています。以前人に聞いたことがありましたが、その左隣の部屋は管理務室になっていて、トイレもあり、お土産も売っています。
ここでEチケットを見せてガイドさんの登場を待ちます。
室内にガイドさんと一緒に十数人の見学者が入り、可動家具なども実演して見せてくれます。
但し、室内は撮影禁止です。

青いビニール袋はオランダの大手スーパーのアルバート・ハインのもの。
旅の間大変御世話になったスーパーです。

右の赤白の高速道路の下をくぐると、すぐにリートフェルト設計のエラスムス通りの連続住宅があります。
シュレーダー邸の見学ツアーの中にはこの建物も含まれていて、音声案内器でここの案内も聞くことができます。(室中には入れません)





アドレス:Heidelberglaan 11, 3584 CS Utrecht,


いわゆるミミズビルですね。
ここは通り過ぎてレム・コールハース設計のエデェカトリアムへ向かいます。


アドレス:Leuvenlaan 19, 3584 CE Utrecht,
レム・コールハース設計1997年竣工
日本人建築家(世界中の建築家でしょうか・・)がこぞって影響を受けた床と壁が一枚の板でつながっているアイデアのほぼ「原型」でしょう。コールハースが登場しなければ室内の床の大半をスロープにするような現在の建築の流行はなかったかもしれません。
アドレス:Leuvenlaan 19, 3584 CE Utrecht,

竣工時に雑誌で見たときに、一枚のコンクリートスラヴを曲げたような屋根と床の繫がり、と認識していたのですが、実物を見て気がつきました。
先端の屋根と床がRにつながっているところは実はコンクリート打放シでは無くて鉄骨造なのですね。
構造体と空間構成が一体ですごい、と勝手な思い込みをしていましたが、以外と現実的に適材適所で作っているという事を知りました。

歩道から徐々に上がって入って行き、さらに右の方はスロープ状に上がって行きます。

右に登って行くとホールがあり、左に下がって行くと学生食堂があります。

スチールの手摺は縦桟のデザインで天端にアクリルの筒型の照明が乗っています。
奧の赤の塗装がされた床は水平で、柱が斜めに立っているようです。

上階へあがる斜めのスラヴは建物の内外に貫通していて、窓外にはブルーやグリーンに光る行灯式のベンチがあります。

床はRC造で、木目の仕上げの床がせり上がって天井につながる部分は鉄骨造です。

球の左側はホールになっていてますので、球体の中は映写機などを入れるスペースかと想像しています。

スロープで上がるルートと階段でつながるルートなど複雑で立体的で面白いです。
さて、他の建築も見て廻りました。



アドレス:Heidelberglaan 3, 3584 CS Utrecht

個人的にはアレッツのマーストリヒト美術建築アカデミーを見たかったのですが、マーストリヒトは少々遠いのであきらめました。

両側のコアにボリュームが架けてあります。


ユトレヒトの代表的な街並みです。普通の観光客はこのあたりをぶらぶらするのが普通かと思います。
意外と水位が低いように見えますが、水門で閉めて水をくみ出し水位を調整して保っている訳です。
自然災害は日本よりは圧倒的に少ないと想像しますが、国土を水没させないために常に水をくみ出し、堤防を維持管理するオランダ人の持久力には敬服します。


おそらく松の木杭の上に建っているのかもしれません。



B&B(ベッド&ブレックファースト)の宿で、ユトレヒト旧市街の木造4階建ての4階ペントハウス部分です。
この部屋を拠点にアムステルダム、ロッテルダム、ユトレヒトを見て回りました。
バスタブはありませんが、専用のキッチン、トイレ、シャワーブースが備わり、朝食は毎朝指定時刻にルームサービスしてくれました。


ちなみに床はだいぶ傾いて、コップの水面も傾いています。


ハウデンの駅のバス亭から47番のバスに乗って10分ほど行ったロント通りの池の向こうにアルミニウム・フォレストが見えて来ます。

設計はミカ・デ・ハース氏 2001年竣工
作品名はAluminium Forestです。
アドレス:Voorveste 2, 3992 DC Houten,

こちらはアルミニウムを使った実験的な建築を作るコンペで誕生したそうです。
細長い複数の足の上に不安定そうにボリュームが乗っている形状ですが、この部分だけ見ると1991年のレム・コールハースのダラヴァ邸を思い出さずにはいられません。また、この不安定な感じをミニチュアにしたデザインは90年終わりから2000年初めごろ日本でもちらほら引用されていました。
それは、そうとして、とても綺麗で、美しいです。
この時は朝ですが、夜景で水面に建物が反射した写真をネットでよく拝見しますが、それがすばらしく美しいです。


カモが居たり、緑豊かで贅沢な住宅街です。

写真はミュージアム入り口の道路対岸にある日本人御用達のディック・ブルーナー・ハウスです。
セントラルミュージアムで入場券を売っていたので、一応入りましたが・・・・・・
http://nijntjemuseum.nl

日本人が相当来るようです。
ディック・ブルーナー・ハウスの方は幼児用の楽しい施設、といった感じで、室内は全域遊具。
大人だけで入場するのは恥ずかしい感じでした。
ちなみに、ミッフィー=ナインンチェプラウス=うさこちゃん の明解な色彩と輪郭はオランダの抽象美術運動「デ・ステイル」の影響を受けているということをこの旅で知りました。子供の頃から知っているミッフィと、建築に興味を持った頃からファンだったシュレーダー邸の色彩がつながることをいまさらながら再認識です。

カフェでミントティーを飲んで一休み。
ディック・ブルーナーの書斎空間が再現してあるフロアもあり、現代美術の展示も楽しめました。
アドレス:Netherlands, Agnietenstraat 1, 3512 XA Utrecht
http://www.centraalmuseum.nl

エーデ駅(Ede)です。

入り口で自転車を借りて十何分か進むと美術館があります。

新館の建物設計はオランダの代表的な建築家のヴィムG.クイスト氏で1977年竣工。
新館は非常に「ミース」的な建築ですが、1938年当時にクレーラー・ミュラー婦人はミースに設計依頼をしたことがあったそうですが気に入らず、結局、旧館はヴァン・デ・ヴェルデに依頼したそうです。
庭園に美術作品が点在していますが、そこに目的の「リートフェルト・パビリオン」があります。

さすが。




ミースのパビリオンは有名ですが、リートフェルトのパビリオンは案外知らない人も多いのではないでしょうか。


また、黒の枠にガラスが入っていますが、黒枠も木製です。







この日はオランダ入りしてから始めてアムステルダム中央駅に来ました。ホームは2階にあり、アーチ型の屋根の下に線路が並びます

アーチ屋根の支柱がGLから生えています。

私鉄とNS(JR的鉄道)が乗り入れているようで、私鉄の改札内に広いロッカーコーナーがあり、そこに荷物を預けて町を見て回れます。



設計は、ミケル・デ・クラーク 1919年竣工 エイヘンハールト=わが家 の意味だそうです。(出展は丸善から出版の山縣洋氏著のオランダの近代建築)アムステルダム派の記念碑的作品との事。行きのKLMの飛行機のオランダ紹介ビデオにも外観が出て来ましたので一押しの建築なのだと想像します。
二等辺三角形の配置で、先端から見た写真の位置です。
短い底辺にあたる部分が正面的ファサードのある側です。
アドレス:Oostzaanstraat 45, 1013 WG Amsterdam

住宅街のようで、人通りはあまりありません。
この時は改修中で、1階には仮囲いがしてありました。
装飾的なディテールであふれていて、本で見たときはあまり気を引かれなかったのですが、現物はなかなか素敵です。


白の窓は木製サッシュのようです。メンテナンスはしてるのでしょうが97年前の木製窓が健在なのかと思うとすごいです。


その下のレンガ壁面に穴の空いた約物が埋まっています。通気でしょうか。

過剰なほどのディテールが盛り込まれていますが、実際の建物はくどさがありませんでした。
素朴な可愛らしさを感じるデザインで、表層の数十センチの凹凸でも建物に十分な陰影と表情を作り出していました。



。

ピロティ部分にエントランスホールがありましたので接近を試みます。場所はオクメール通りとライメルスワール通りの交差点付近です。


広い道路に面した側ですが、強烈なキャンチレバーが5つ突き出ています。
日本でもクルマのテレビCMで背景に使われていたように思うので、見たことのある人も多いでしょう。

古びても「本物」は良いですね。


オランダは鳥やブタや牛などが都市部のちょっとした緑地や歩道にも出没していて、運河や緑地が都市の中に点在(というよりも緑地と運河の中に都市が点在)しているので、動物との距離が近く、おおらかな時間が流れているように感じました。


ニュース専門の映画館で、鉄骨造との事です。
既に見て来たオープンエアスクールや、これから見に行くゾンネストラールやホーイラントホテルの設計者です。
グーグルマップに表示されませんので、対面して建つトゥスヒンスキー劇場を目指して行くと良いでしょう。

設計者はH.L.de Jong
アドレス:Reguliersbreestraat 26-34, 1017 CN Amsterdam,

ユトレヒトと同じく傾いていて、ちょっと可愛らしいです。

オランダ近代建築の父とされるヘンドリック・ペトルス・ベルラー設計で1903年完成
https://beursvanberlage.com

この場の撮影はOKとの事で、奧のガラス越しに音楽ホールとして使われている空間が見えます。

写真では屋根がガラスですが、以前見たエクスナレッジのガイド本では屋根が不透明でしたので改装したのかもしれません。

65番のバスに乗って、一気にKNSM島の先端の終点まで行き、歩きながら各建築を見て廻ります。
まずはバス亭終点前のヨー・クーネン設計の円形の集合住宅から見学しました。
アドレス:Venetiëhof 21, 1019 NA Amsterdam

このKNSM島は元は船会社のKNSMが持っていた島で、マスタープランをヨー・クーネンが設計して、自らこの集合住宅も設計したとのこと。
竣工は1995年

失敗しない色です。


90年代にエルクロッキーでよく拝見していた建物で、ボリュームの分節の仕方を当時参考にしました。



1996年竣工ですから、もう20年経ったにしては綺麗に色が残っていると思いました。
本石でピンコロ石を貼ろうとしたら、脱落防止を色々と考える必要もあります。
フェイクの石仕上げはなかなか成功してるのかもしれません。

左下の明るい茶色部分がエントランスのドアで上層のガラスカーテンウオールの所は各戸のサンルームになっているようです。

この方式はオランダで一番一般的なポストレイアウトのようです。
日本のマンションの場合は室内にポストを設置するのが一般的ですが、ザーザー雨が日本よりも少ないという事が影響しているのかもしれません。
とは言え、この日は小雨でポストのクチからはみ出した郵便は濡れているようです・・・・


六角ナットを思わせるデザインです。



アドレス:Oostelijke Handelskade 1065, 1019 BW Amsterdam,
ノイトリング・リーダイク設計 1998年竣工
高層部が住宅で、低層部はショッピングモールです。
外観の一部が欠けているデザインのほぼ元祖では、と思います。
最近の日本の高層オフィスビルはこれにだいぶ影響を受けたと思います。
ただ、日本の場合は共同住宅では非難バルコニーが必要なので、このようなデザインはオフィスビルでないとなかなかできません。

設計はデ・アーキテクテン・シー
歩道から浮き上がっている部分下ピロティがエントランスです。


地上に出ている機械パーキングを見慣れた日本人から見ると、キチンと作られていてとても素敵です。
まあ、地下を掘るよりは地上式の機械パーキングの方が安いので仕方ないのですが、、景観はぶち壊しです。
景観を守るための必要経費をどう見るか、は国民性でしょうか。

中には配管類が見えます。

涼しい気候と想像しますので、エアコン室外機置き場、なんていらないのでしょうか。
綺麗です。

この橋もデザイナーによるものです。

現在はマナプラザというデパートになっていて、1899年竣工で1991年にリノベーションされたとの事。

GLから半層上り、と半層下がると地下、1階のみスキップフロアの構成も良いです。
水が出るのでしょうから全地下は難しかったのでしょう。


恋人達が付けて行くのは何処の国も同じですね。

ユトレヒトからインターシティで乗って37分。ロッテルダムには概ね1日を費やして近代建築を見て廻ります。
それで、、、、ロッテルダム中央駅ですが、行ってからわかりましたが、MVRDV設計でした。

東京駅などのように進化し続ける駅ではなく、完成形としての駅です。







デパート屋上まで仮設階段で上れるというもの!日本ではまず、許可されないと思われる大胆な催しです。

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