ハンガリー建築旅行2

2025.03.14

ハンガリー建築旅行2

2024年の3月に出かけたハンガリー建築旅行
ブダペスト入りして3日目は市民公園を見た後、長距離バスでパクッシュとカカスドのイムレ・マコヴェッチ氏設計の建築を目指します。

ハンガリー3日目は朝食の後市民公園で現代建築2件を見て、その後長距離バスでパクシュとカカスドヘ日帰りで行く日程です。

で、写真は東欧のシャンゼリゼ通りと言われるアンドラーシ通り。
ほどなく見えて来たのが「恐怖の館」と言われるミュージアムです。
第二次大戦後にハンガリーはソビエト主導の東側陣営になったわけですが、その時の秘密警察の本部との事。
歩道には「ベルリンの壁」の一部が保存されています。

思い返せば1989年に東側だったハンガリーがオーストリアとの国境を開放したことで東ドイツ国民の大量亡命に火が付き東欧共産圏は崩壊。
ハンガリー首相のネーメト氏の緻密な作戦とソ連のゴルビーのペレストロイカがあって今の世界に作り替えられた訳です。

ハンガリーって結構偉大です。
さて、公園前の交差点に着くと石川好みの素敵な建築がありました。
パラペットのラインを曲線にして可愛らしい感じが出ています。

後で調べたらセルビア大使館でした。右に見切れているのはセルビア領事館。
なかなか良いです。
そして道路対岸には英雄広場です。
ハンガリー建国1000年を記念して1896年に造られたとの事。

右奧に市民広場、左奧に市立動物園やセーチェニ温泉があります。
市民公園の中に2022年に竣工した民俗学博物館。
設計はハンガリーのナプール・アーキテクト(NAPUR Architect)で国際設計コンペで選ばれた物です。
大きな弓型の形状が地面に埋まったような形で中央は地面レベルと同じに高さになっていて、そこから弓の内側の庭園を登って行く事が出来ます。
朝の開業前の時間ですが、屋上庭園は自由に入れるようです。
これ日本だったら、せり上がって行く壁面の上をGLから人が登らないようにツイタテを付けろと指導されそうです。

そんなもの付けたら台無しですけどさすが欧州大人の対応です。
歩行者が頭を打ちそうな位置にはベンチを配置して事故防止対策されてました。
表層の中には人が入れる程のスペースがあり、中にはビル本体の窓が見えます。
民俗学博物館先には日本の藤本壮介氏が設計した「音楽の家」 ハンガリー語Magyar Zene Házaがあります。

竣工は2021年で設計コンペは2014年に発表され藤本氏の案が選ばれましたが、その斬新な案のため完成前に多くの権威ある賞を受賞したとの事。
ちなみに建物のあるブダペスト市民公園は公共公園のリニューアルプロジェクトとしてヨーロッパ最大級の文化的都市開発リゲ・ブダペスト・プロジェクトとして整備が進んでいるとの事です。

大きな庇が浮いたようなデザインで軒下面には金色の「葉っぱ」を模したピースがちりばめられています。写真の左奥には屋外ミニコンサートの出来る階段状の構造物があり、その周りは植栽で丘のように整えられています。

軒天井には所々穴があり、樹木が貫通しています。

会館時間前に到着しましたが、1時間ほど待って(実際はその間に民族博物館の外観を見てました)入館することにしました。
さて、金色の庇が浮いている形状は以前バルセロナで見た蚤の市の建築(フェルミン・バスケス設計で2013年竣工)を思い出しますが、あちらは金色の庇だけで地下の様子を映す鏡として表現されています。

こちら音楽の家は庇の中には音楽スタジオなどが内包されています。
螺旋状の階段が地下と2階をつらぬいています。
まずは地下へ。
階段の段板はこの大きさですから人研ぎのテラゾーなのかと。
昨今の欧州の床の流行は大判で継ぎ目無くコンクリート調やモルタル調、又はテラゾーのような無機質で均一な仕上げです。
日本もそれを追っかけて、最近はそちらの方向です。
階段手摺りは1階は黒で地階は白。
どこで塗り分けているのか・・・・やりますね。
さすが。
地下のホワイエです。
学生達が見学に来ていました。

階段下には造作ベンチです。
ペラペラの力板が緊張感をもたせてました。

ここも、階段の下の低い所の角に頭をぶつけないように配慮したデザインです。
今度は上階へ
金色の葉っぱの真横から。
このような仕上げの時は裏側が見えて、その仕上げ程度が気になります。
しかし、ここではあまり気になりませんでした。

商業的な飾りに見えてしまいそうな金色の葉っぱは現地で見るとちゃんと建築的な建物の一員となっていました。
最上階です。
写真は最上階から階段見下ろしで、地下まで写っています。
小スタジオや会議室などが配置されているようです。

ということでハンガリー音楽の家の見学終了。
「久しぶりに現代建築で力作を見た」と思いました。
特に森の中で見上げると金色の葉っぱが一面にあるアイデアはオリジナリティーを感じますし詩的でもあり素敵でした。

コロナでハンガリー旅行が数年遅れましたが、そのおかげで2021年竣工のこの建物を見る事ができました。
音楽の家を後にして市民公園を徒歩で北上してトラムの1番の駅へ。
トラムの1番に乗り込み時計回りで移動。
昼前から長距離バスでパクシュ(Paks)とカカスド(Kakasd)にあるマコヴェッチ氏設計の建築を見に行くためネプリゲト長距離バスターミナルへ向かいます。
こちらがバスセンターで、地下1階のホールに有人のチケット売り場がありました。
で、ここまではネットや地球の歩き方に書いてあるですが、ここからが問題。

我々はブダペストからパクシュで一旦下車して建築を見学した後、再乗車してカカスドへ行きたいのですが途中下車から先の分はここでは買えない模様です。
再乗車するときに運転手へ直接現金かクレジットカードで払う形式との説明です。

で、ネットや案内本ではバスはあまり混んでない、という前情報と1本前に出発したバスが空いていたため出発時間までベンチでくつろぐ事に。
これがチケットでパクシュまでは2時間20分ほどの距離で1人2200フォリント(1100円)

それで、時間になって乗り場へ行くと、なんと長蛇の列です。
これでは絶対乗りきれない、と思いつつやむなく後ろへ並んでいると、またしてもハンガリーの好青年がハンガリー語で話しかけてくれました。
おそらく・・・「そのチケットを買った人は優先搭乗できるんだよ」との事。

長距離バスの乗車方法は・・・
1)ターミナルでチケットを買う・・これ我々の方法
2)スマホでチケットを買う・・これは1より割引きがある分、乗車の優先順位が低い
3)バス運転手に現金やカードで払って乗る・・これも満員なら乗れない

といった具合だったのです。
ハンガリー好青年は我々が先に乗ったら自分は乗れないかも知れないのに教えてくれました。
初日に電車で教えてえくれたハンガリーカップルに続き、なんて親切な国民なんだろうと感謝しつつ列の最前列へ繰り上がって乗車できました。
草原の中の高速道路を進みます。
途中の田舎町では人々が下りたり、乗ったり、小さな街では学生が沢山乗って来て、又大きめの街で下りて行きました。
ブダペストから119キロの位置にあるパクシュ(パークスとも訳されてます)缶詰工場前のバス停に到着です。(乗ってきたバスの写真です)
バス停から徒歩で10分ほど進むと住宅地の中に見えて来ます。
#モコビッチ設計の境界
イムレ・マコヴェッチ氏設計のカトリック教会、1990年竣工。
マコヴェッチ氏の代表作です。

マコヴェッチ財団のHP解説によると、「古代の標識を空間表現した形」との事です。
塔とドーム型の礼拝堂の組み合わせは今まで見て来た教会と同じ構成です。
エクスナレッジの建築案内本によると「マジャール人の世界をイメージさせる」とあります。

マジャールとはハンガリー語でハンガリー人を意味します。
ロシアのウラル山脈近くに住んでいた民族で遊牧生活をしなが西へ移動して来て、フランスやイタリヤあたりまで進出していましたが、ドイツのザクセン王朝に敗北して現在の地に定住したとの事です。
観光客が来るような教会ではないのでミサをやってないときは入れないと思われます。
メールで問い合わせておいてお願いする手もあるかもしませんが、立ち寄れる時間も未確定でしたので外から見るだけの覚悟で行きました。
ガラス越しに室内を拝見しました。
木造の像が見えます。
塔をしたから見上げた様子。
軸組造の木造で上部に鐘があります。
パクシュの教会を見た後はバス亭に戻り、次の目的地のカカスドへ向かいます。
(地図には前日行ったシオーフォクも記載してます)
パクシュ缶詰工場バス亭から再乗車して途中にセクサールドの町で乗り換えか、直通で来れる便の2種類がありますが運良く直通便で1時間ほどで着きました。
こちらが降車したバス停で目的地の目の前です。このバス停も可愛らしいデザインで好物です。
ちなみに白い自転車が置いてありますが、これはインスタレーションの模様。
後日行った町でもありました。
イムレ・マコヴェッチ氏設計のカカスドの村役場に到着。(1994年竣工)
エクスナレッジの建築案内本で見つけた施設ですがデザインの全く違う2つの塔が対峙する外観に心引かれて、はるばる見に来る事にしました。
トルコのハンガリー侵略時中にシュヴァーベン人がこの地に住み着いたのがカカスドの始まりとの事。
その後ドイツ系の住民とシェクラー族がこの地で暮らした。
新しく村の施設を設計するにあたってマコヴェッチ氏はその2つの文化が持つ建築の形を計画に取り入れたと記載がありました。それで毛色のまったく違う2つの塔が配置された建築が出来ている訳です。

(市役所の公式HP https://www.kakasd.hu/ )
おそらくこの黒い塔がマコヴェッチ財団HPに記載のある伝統的セーケリーの鐘桜なのかなと。
白い塔がシュヴァーベン教会の塔のレプリカでは? 色々調べてますが決定打がみつかりません。
白い塔の1階部分です。
奧に軒下空間が続きます。
マコヴェッチ財団のHPでは銀行やホール、パブがあると記載があります。
村役場と言うことで見学できるかな? と期待して行きましたが、保育園活動をやっている部屋があった他は人の気配がありません。
部屋の中には子供達が遊んでいるようでしたが、写真を撮れる雰囲気では無いので外の回廊までの立ち入りです。
王宮の丘で見た形式と同じアール形状の可愛い形の屋根窓がありました。
村役場の並びには「聖アンナ礼拝堂」という小さな教会がありちょっと見学しました。
それで・・左隣りに洋菓子屋さんがありました。
こちらの名前は「アンナケーキ店」思わず吸い込まれてケーキをお土産に買ってしまいました。
ケーキ屋さんの対岸のバス停です。
終バスを逃すと一大事なので早目にバス停前に移動。
ところでここは横断歩道が無いので決死の横断です。

バスでセクサールド駅まで戻りそこから電車でブダペストへ戻ります。
これはバスの中で運転手から買ったチケットです。(17時27分乗車で終バスです)
真ん中あたりに乗車したKakasdと降車するSzekszardの文字があります。
クレジットカードのタッチ決済で払います。
2人で900フォリントでした。
セクサールド駅です。
ここから乗車して途中のサルボガルド駅で急行に乗り換えてブダペストへ戻ります。
乗り換えのサルボガルド駅のホーム狭いです!
幅は1.5mほどの所に乗車する列車が入線してきました。
スレスレ感がスゴイ!
ブダペスト到着日を0日目(夜到着なので)として4日目の朝です。
4泊した部屋も今日でお別れ。
ホテルのフロント前のロビーの空間です。
とても素敵なホテルでした。

さてチェックアウトを済ませ、この日はハンガリー第2の都市であるデブレツェンと手前にあるエベスの町へ向かいます。
まずは出発するブダペスト西駅へ。
ハンガリーで最も華やかな駅で1877年竣工。エッフェル社によって建設されています。
建物内には線路が4本しか入ってないですが写真奥の建物の外に多くの線路が入っています。
さて、ブダペストは多くの映画の舞台になっているとの事。
ブダペストとしては元より、どこか他の都市のダミーとしても使われる町なのだそうです。

この駅も スティーブン・スピルバーグの「ミュンヘン」を。ブラッド・ピットとロバート・レッドフォードの「スパイゲーム」。又「エビータ」ではブエノスアイレスの背景となり、「ダイハード/ラスト・デイ」ではモスクワ駅のダミーに採用されています。

出典・ハンガリーの制作支援サービスHP
https://progressiveproductions.jp/top-filming-locations-hungary/nyugati-train-station
2024年3月時点は屋内ホームの右側の扉が閉鎖されていましたが本来はこの中がキップ売り場や待合スペースなのだとか。
ドアのガラス越しに中をのぞくと・・・
ネットで見つけた駅の案内ではこの空間がキップ売り場だった模様。
改修のためなのか撮影のためなのか・・・ガランと空いています。
装飾がエッフェルらしさを感じます。
屋根の中央はガラスで架けられていますが周囲は真新しい木板で張り直して間もないような感じです。
それにしても構造材が細くて繊細。
キップ売り場は外にコンテナを置いてその中で売っていました。

さて、西駅舎には「世界で最も美しいマクドナルド」が併設されていると聞きますが、見当たりません。ぐるっと駅を廻るとマックのトレーラーが止まっていました。
本来はトレーラーの奧の建物内にマクドナルドが有ったのですが改装のためか外でトレーラーで売っていました。「美しいマクドナルド店」を見られず残念です。
西駅を見学の後はハンガリー第2の都市手前のエベスの町へ小さな教会を見に出かけます。
エベスは小さな駅なのでインターシティは停車せず。
そのため、各駅停車で2時間45分の旅です。
デブレツェン行きの列車です。
デブレツェンの1つ前の駅エベス(Ebes)の表示があり安心。
赤いレジ袋はハンガリー地元スーパーのPrimaのエコバック。
もう少ししっかりしたバックを買いたかったのですが、ホテルの近所のPrimaにはありませんでした。
線路の状態が良いところはスピードを上げ、悪いところはノロノロ運転に変わります。
エベスに到着。
下りたのは我々2人だけでした。
写真は駅裏ですが、こちら側にエベスの町が広がっていて目的の教会もその中にあります。
ここから徒歩で20分ほど。
ebes
エベスの駅前広場(といってもただの空き地)から中央の道を進みました。
改革派教会Ebes
改革派教会Ebesに到着です。
改革派教会Ebes
この教会は2018年にハンガリーの建築をリサーチしていた時にネットで偶然見つけました。
可愛らしい造形に心引かれてついに現地へ。

塔と礼拝堂の組み合わせは今まで見て来た教会と同じです。設計者はゾルタン・ラチ氏(Racz Zoltan 1957年生まれ)との事ですが、日本では全く知られていないと思います。私も知りませんでした。
竣工は1997年。

ハンガリーのWeb建築マガジンに掲載があるので現地では著名な建築家なのだと思います。
https://eloepiteszet.hu/hu/epuletek/epiteszek/egyesulesen-kivuli-epiteszek/racz-zoltan/ebes-reformatus-templom

改革派教会Ebes
牛乳瓶のような塔がなんとも素敵。
改革派教会Ebes
切妻形のボリュームと塔の組み合わせというシンプルな構成なのに棟を傾斜させたり平面を台形に広げたりすることで軒に角度が着いたりと変化があり個性を発していました。
改革派教会Ebes
西面です。
右の付属棟は竣工時の写真には無かったので増築された模様。
流れるような有機的なデザインです。
左官仕上げの白い壁には繊細な段差を利用した曲線があしらわれてユーモラスです。
外壁が汚れないように下側に段差が来るコテさばき。
増築棟の玄関前から。
母屋と違った形ですが、調和してました。
改革派教会Ebes
なにしろ、何処を切り取っても「可愛らしい」です。
さて、エベスの駅へ戻り自動販売機で一駅分のキップを購入してハンガリー第二の都市デブレツェンへ。
何故か左下に靴がそろえておいてありました。我々の他には人は居ませんが・・・・
デブレツェン駅から南下してテグラスケルト改革派教会を見に移動です。
デブレツェン駅に到着。Webで駅を検索すると画像が出てくる待合室です。
アーチ型のハイサイドライトが効いてます。
駅舎の外観です。
駅前広場はトラムとバスの乗り場になっていまして我々はテグラスケルト改革派教会へ行くためバスに乗ります。
デブレツェン駅広場にある交通局のチケット売り場へ。(広場の真ん中にある平屋の建物)
ここではブダペスト交通局のパスは使えません。
こちらがデブレツェン交通局の回数券。
日本と同じで10回分の料金で1回オマケがついてます。
このチケットをバスやトラムに乗るときに乗り口に備え付けの機械に差し込んで刻印を打ちます。

さて、47Yのバスに乗ってブリックヤードスクールバス亭(Tégláskerti iskola)を目指します。

つづく