ハンガリー建築旅行3

2025.10.15

ハンガリー建築旅行3

2024年3月ハンガリー建築旅行
ハンガリー第2の都市デブレツェンから戻り旅の最終2日間にブダペスト市内を廻る様子です。

デブレツェンから戻り、アパートに荷物を放り込んだあとはドナウ川ほとりにある無料の展望台のジグラット(Ziggurat) に。
グーグルアースに写った渦巻きがそれで、「なんだろ?」と言うことで行きました。
旋状に外周を上がって行く動線で、左の入り口からは室内の展示室にはいれるようですが、この日は既に閉館時間(あるいは日曜なのでお休み)でした。
頭頂部に到着。
なかなか良いアイデアで構成されていて楽しい施設でした。

遠くにペテーフィ橋が見えます。
その展望台の横にあるのがブダペスト芸術宮殿(Müpa Budapest)です。
竣工は2005年3月で設計者はブダペストのZoboki Design & Architecture。

ハンガリーではほぼ例の無い音楽系と美術系の複合施設との事。
音楽ホール・練習室・美術館等々が入っています。
エントランスは磯崎新氏の岡山西警察署を思い出させます。
ブダペスト芸術宮殿(Müpa Budapest)のホワイエです。
現代美術館側に入りました。
この日はヴェラ・モルナール回顧展をやっていました。
ヴェラ・モルナールはハンガリー人メディアアーティストで、1924年生まれで2023年12月死去。
行ったのは3月でしたから、亡くなって2ヶ月を過ぎた頃でした。
ウィキペディアによると・・・
「モルナールは、コンピューター アートのジェネレーティブ アートの側面の先駆者であると広く考えられています。彼女は美術の実践にコンピューターを使用した最初の女性の 1 人」
との事。

パリを拠点に活躍されていたそうです。
自分達が写るブラウン管の列。
数年前に東京で同じような表現を日本人アーティストが展示しているのを見ましたが、その草分け的な人がハンガリーに居られたことを知りました。
さて、この日の夜から2泊する旅行3つめの宿でアパートタイプの部屋です。
広々していて、1週間くらいは居たい感じです。
2LDKで2人で2泊1万9千円程度。
キッチンには食器や調理器具もそろっていて「生活できる」レベルですが食材を買って料理するには日数不足でした。
LDKは中庭側に面しています。
向こう側の建物もリビングが中庭に面しています。
ダブルベッドの寝室が2つありました。
ベッドルームのベランダからは外の道路を見渡せます。
私の感覚からすると、中庭に寝室を面させて道路側にリビングを配置しそうな気がしますが、逆なんですね。
共同住宅の数十戸がアパートタイプの客室で、フロント機能は1階の道路に面した店舗風の場所でした。24時間フロントに人も居るようでしたので困ることも無く過ごせました。

こちらがアパートのURL
https://novabudapest.com/

ハンガリー6日目の朝は2泊するアパートを出発してブダペスト市内に出かけます。
イムレ・マコヴェッチ設計のビルです。
氏は教会建築が多いのですが、こちらはコンコルガン社ビルとの事。
イムレ・マコヴェッチ財団のHPで見つけました。
氏がビル物をデザインするとどうなるのかな・・・と興味があって訪れました。
やはり「普通」ではないですね。
竣工は1991年との事。
低層を通常の街並みに合わせて作り、上層を新しいデザインにする手法が80年代後半から90年代にかけて日本では流行っていました。(皮切りは横浜馬車道の現損保ジャパンビルだと思います)
他の国でもそうだったのかと(むしろ海外から日本に入った手法なのか?)時代を感じました。

さて、企業ビルなので入れません。
マコヴェッチ財団のHPには室内写真があります。
https://www.makovecz.hu/epuletek/comporgan-irodahaz-budapest-viii/
コンコルガン社ビルを後にしてブダペスト東駅を目指します。
こちらは途中の街並みで見かけた建築ですが、棟屋が独特ですね。
ブダペスト東駅が見えて来ます。
Y字路になった大きな二つの道路に挟まれています。
駅前の広場の下はサンクンガーデンになっていて周囲の道路から地下の歩道を通って駅にアプローチするようになっています。
また地下鉄2号線の駅もサンクンガーデンにつながっていて、とても良く出来た動線計画です。
地上に歩道デッキで解決する日本とは対照的。
地下を掘ってお金が掛かるけど街並みを大切にしていますね。
西駅も良かったですが、東駅も格別。
地下階へ下りると外にあるサンクンガーデンへつながっています。
右でカメラかまえてるの私です。
ブダペスト東駅の北口です。こちらもまた素敵。
正面の奥の開口先はホームです。ホールから左右(東西)に廊下が延びています。
何処を撮っても絵になります・・・
東へ延びる廊下は少々朽ちてますが味が有ってイイです。
西へ延びる廊下。
2024年現在、ハンガリーはオリンピック誘致に向かってます。
そのため、駅は綺麗に補修や改修が行われているのだと思います。

さて、東駅を後にして次のターゲットへ街並みを見ながら徒歩移動です。
東駅を後にしてテヨキョリ通りを北上しレヒネルの代表作の「地質学研究所」を目指します。
その途中でお屋敷街を通りました。
それぞれ個性的な家が並んでいる通りです。
よく見ると住宅それぞれに説明のプレートが付いています。
スマホ翻訳で読むと、それぞれの家のストーリーが解り、なかなか楽しめます。
今も実際に住んでいる家のようです。
レヒネル・エデン設計の地質学研究所へ到着です。1899年竣工

地球の歩き方にも出ているほどレヒネル・エデンはハンガリーを代表する建築家です。
という訳でこの地質学研究所と郵便貯金局と工芸美術館(応用美術館)の3つは押さえどころです。
申し込めばガイドツアーもあるようです。
地質学研究所にちなんで貝殻などの化石の形の装飾がされていて、屋根はお約束の青い陶器で葺かれています。
この後はトロリーバスに乗ってレヒネル作の住宅を見つつ市立動物園を目指します。
シペキ・バラージュ邸へ移動です。
この家もレヒネル・エデン設計で1905年竣工で数日前に見学した市民公園の北側の道路に面して建っています。
レヒネル後期の作品でユダヤ人のシペキ・バラージュ氏のための家で現在は盲人協会が使っているとの事です。
中央のハートっぽい造形は郵便貯金局でも表現されていた形ですね。
この家も資料は非常に少なくて、それでもエクスナレッジのガイド本とLIXILが出版している「レヒネル・エデンの建築」に出ていて興味が湧いて見に来ました。
本に出ていた外観写真は古びていましたが、見学時は綺麗に修復されています。
ブダペスト市民公園の北西にある市立動物園です。
エクスナレッジの建築ガイド本「世界の街並みガイド5」によるとハンガリー建築家のカロリー・コス(1883年ー1977年)の設計による鳥小屋があるとの事。また、複数の建築家によって様々な施設が作られていると記載があり立ち寄りました。
建築旅行で「動物園?」と思うところですが、ロンドン動物園のペンギンプールの例もあるので一見の価値あるかもと。
動物園や遊園地のハリボテ感は無くて、普通に建築として真剣に作られているように見えます。
動物園なので動物が居ます。
こちらはハンガリー名物のマンガリッツア豚で霜降り率が高く2004年に国会で「国宝」に認定されたと。
でも、食用の家畜が動物園に居る訳で、日本的に解釈すると和牛が動物園で展示されてる感覚です。
建築ガイド本に出ていた象小屋です。
本に出てる写真は全体像でなくて、塔の右側の丸窓部分の2階まで。
建物を探していて園の人にたずねても’???どこ?」といったリアクションでした。
建物裏手側です。
モスクを模しているとの事で真剣勝負の建築でした。
通路の左側が象の展示空間で右のアーチの中にはカバが居ました。
右が裏側の入り口。
撮影時は現地の午前11時頃だったのですが到着時は閉まっていて、ちょうどカギを開けて展示開始の時でした。
ガラスフェンスの向こう側に象がいます。
シャンデリアのディテールです。
手が込んでます。
カバのエリアはハイサイドライトが効いてます。
ゾウ小屋を満喫し次は建築ガイドにもある鳥小屋へ移動します。
こちらが建築ガイド本にも出ている鳥小屋で設計者はカロリー・コス と デズソ・ズルメツキとの事。
室内の空間は展示物が小さめの鳥のため象小屋ほどダイナミックではありません。
外壁にあったプレートです。
1997年に記念建物に指定されたと記載があります。
海外で流行している記念碑的な動物園ではなくルーマニアのトランシルヴァニア派にみられる教会の鐘楼部を参考にしている形状との事です。
動物園の前にはハンガリー名物の温泉施設「セーチェニ温泉」があります。
「ハンガリーは世界でも有数の温泉王国」と地球の歩き方に記載がありまして入って見ることに。
入場券を買う(券ではなくてリストバンドが支給されます)エントランスです。
日本と違い水着を着て入るタイプで、手ぶらで来てもレンタル品があるようですが一応水着とサンダルを日本から持参してきました。
入場券代わりのリストバンドを端末に当てると着替える個室の番号が表示されます。
数人で使えるフェミリー用更衣室や電話ボックス程度の大きさの部屋など、数タイプの更衣室を選べました。表示されている181というのが私の更衣室の番号です。
我々は電話ボックス程度の1人用(複数人でも使っても良いようですが)の広さの更衣室を2つチョイス。カギはかかりますからカメラなども置いておけます。
日本的な感覚では温水プールの感じです。「プールサイド」にタオルやサンダルを置いて入浴します。
ところで、ここはスマホ程度なら持ち込んで撮影してもOKという事だそうで、防水パックに入れて持ち込みました。

水温は28度で気温は14度。スイスで入った温泉も温度はこんな感じでしたので熱々で入る国は日本くらいなのでしょうかね?

ブダペストには有名な温泉施設が数カ所ありますが、ここは庶民的な温泉で「映え」を求めて自撮りするタイプの人達はいませんでした。(まだ春前だからかも・・・)
ガイドブックにも記載のある名物の「風呂チェス」です。
子供の頃にフジテレビの「なるほどザワールド」で見たような記憶があるような、無いような・・・
温泉を出てホテルへ帰るため地下鉄1号線のSzechenyi furdo駅へ。
1号線は地下鉄として世界遺産に登録されています。
(ブダペストの地下鉄は旅行1日目で買った15日パスで乗り放題)

世界初の地下鉄はロンドンですがユーラシア大陸では初めての地下鉄ということで2番目に古いそうで、さらに電車の地下鉄としては世界初との事(ロンドンは蒸気機関車だったので)。
OKTOGONで降車。
これはキップに刻印を打つ機械。
キップで乗るときはこれで入場時刻を打ちます。

ちなみに券売機は地上の歩道にあり、駅の中に券売機などは無くてメチャクチャスッキリしています。
ホームから振り返るとほぼこの景色。
電車のある深さから、階段20段ほど上がると地上です。

ドアは木製でアンティークな感じです。
地上からの見返しです。
地面と地下の天井の巾が土被り厚ですが1m無さそうな厚みです。
この厚みの梁で道路や通行車両の重量をささえているとはスゴすぎます。

工法は開削工法(地上から掘って、埋め戻し、またはフタをする方法)との事ですが、かなり驚きました。ちょっと怖いくらいです。
温泉を出てこんな感じでアパートに戻りました。
一旦アパートに戻って温泉から持ち帰ったサンダルと塗れた水着を置いて夕方のブダペストの街へ再出発。

で、アパート近くにあった「カフェ・ニューヨーク」へ向かいます。世紀末のブダペストはウイーンと並んで中欧カフェ文化の中心だったとの事。
設計はハンガリー建築家のアラヨシュ・ハウスマン(Hauszman Alajos)で竣工は1894。

建築案内本で見つけたのですが地球の歩き方にも載っている観光スポットです。
建物はアナンタラ・ニューヨーク・パレスブダペスト という5つ星ホテルで、そのレストランとカフェの部分がここです。
早速入場です。
ネットの記事によると待ち時間がスゴイとありましたがシーズンオフの3月の夕方なので待たずにすぐ案内してもらえました。
運良くバイオリンの生演奏をしていて、さらに運良く演奏場所から2列目のテーブルに通されました。
パートナーがオーダーしたケーキのセット。
私はミントティーを飲みました。
1層下にもホールがあり、こちらはディナー用となっているのかなと?
地上レベルにあるカフェエ部分と上手く同線別けて計画されてました。

つづく

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