コラム

オランダ建築旅行 その2

更新日:2017年12月14日

2017年12月14日更新
2016年の春に行ったオランダ建築旅行その2です。
オランダへ来たのはなんと言っても世界遺産のファンネレ工場を是非見たい、という願望からです。
ロッテルダム駅南口正面を出て右へ進むとバスターミナルがあり、そこから38番のバスに乗ってRotterdam, Beukelsbrug で下車。
鉄道の高架下をくぐって進むと世界遺産のファン・ネレ工場が見えて来ます!
アドレス:Van Nelleweg 1, 3044 BC Rotterdam, オランダ


工場のゲートを内側から見た様子です。
ゲートもスチールサッシュが美しいです。守衛さんに見学しに来たと身振り手振りで伝えると、「行け行け」といった仕草で送られます。


有名な全景です。感激しました。


敷地の緑地にはアヒルが歩いてます。


さて、オランダ入りした後で見学ツアーがあることを知人に聞きまして、早速持っていったタブレットで予約してチケットをダウンロードして持参です。
紙でなくても大丈夫でした。
ファンネレ工場WEB
(http://urbanguides.nl/en/tour/instaptour-van-nelle-fabriek/)


まずはツアーの集合場所に向かいます。どこだかわからず行きましたが、他の人について行けばOKといった感じ。
写真の3階部分が2層吹抜になっているのが解りますが、このホールが集合場所でした。


階段を上って表れたホール。ガラスサッシュが繊細で感激です。


こちらはガラス側に立って奧側を見たところです。
ここまで外から特にゲートはありませんでしたので、奧のカフェなどにはツアーチケットを購入しなくても入れるようです。


上階から見下ろしです。ファンネレ工場の写真はこれでもか、というくらい撮りましたので、しつこく続きます。


ツアー開始でガイドの女性に着いていきます。
世界遺産ですので「建築君」以外にも一般の見学者も沢山居ます。まずは一端地上に下りて開始です。


窓の中には古い制御盤が入っています。
ガイドさんが解説していますが、言葉はわからずで写真撮影に没頭!


敷地入り口側にある低層棟へ向かいます。ここから建物へ入り直します。


こちらが低層棟の内部で、事務室になっています。現在も使われているように見えますが、この日は休業の様子です。


階段を上がって2階へ。可愛らしい感じの空間です。


階段を上がるとガラス張りのブリッジを渡って事務棟から工場棟へ移動です。


ガラス壁と床の間は水平にガラスで仕切られています。
ここからまた1階へ下ります。


ブリッジからの風景です。
白の外壁とスチールサッシュの繊細さが光ります。


事務棟からブリッジを渡って階段をおりてエレベーターの乗り場へでました。写真は回転ドアで・・


回転ドア部分はここです。


エレベーターに乗って最上部にある丸い展望室へあがります。展望室がある事に今まで気がついていませんでした。


展望室の内部です。
周囲をぐるっと見渡せるガラスの外壁にそって放熱器のパイプとベンチが並びます。


外部の様子です。


屋上からの眺望。


円形の平面の中付近に開いた螺旋階段です。黒の断板がスタイリッシュ。
今度引用してみようとおもいます。


展望室から階段を下ります。
写真は階段室を事務室からの廊下が貫通しているところ。


2つの階段が交差しながら登ります。
日本でも昔はデパートなどで見たように思いますが、2つの避難階段の独立性が希薄なので今の日本では作りづらい階段です。


照明の器具も興味深いです。


トイレの手洗いです。
部屋の真ん中にあるタイプは珍しいですね。
ちょと目からウロコです。


階段室から外観の特徴である斜めの渡り廊下を見下ろします。


こちらのドアは吊りもと足元の半円形のレールに注目。
ドアの自重で自動で閉まるように工夫してあります。


再び外に出て付属棟を外から見て廻ります。


棟ごとに番号がふられていて、「基地」風で格好いいです。


と言うことでファンネレ工場見学でした。


ファン・ネレ工場からトラムの8番に乗って移動。
ミュージアムパークの中に位置する「クンストハル」へ。
平べったいボリュームの上に鉄骨の棟屋が立っているこの形態のアイデア、海外メディアに出たあと、日本ですぐに引用されて、しかも賞まで受賞したので当時ちょっとびっくりしました。
アドレス:Westzeedijk 341, 3015 AA Rotterdam, オランダ


クンストハルは1992年竣工のレム・コールハース設計の美術館です。
世界にコールハース旋風を巻き起こした時代の建築です。日本人の建築家がこぞって引用したボキャブラリーが一杯ある建物で、見学がたのしみでした。ちなみに右の土手は堤防だそうで、その上からのアプローチと堤防下の道路からのアプローチと2つの高さからアプローチできるようになっています。


堤防側の入り口はクルマで入ってスロープで建物内を貫通する仕組み。
壁にでかくサインを書くアイデアは今では日本でも公共建築でよく使われますが、おそらくコールハースが初めて使った手法と思います。
建物を貫通する道からスロープ状のスラブ断面を見上げることができます。


オレンジの矢印にそって美術館のエントランスです。


エントランス入るとカフェがあり、その横にチケットを買うカウンターがありますが、ちょっと写真を撮れなかったため、いきなりクローク前の廊下です。
カフェから展示室へつながる動線の途中にこのクロークがあります。天井からパイプが下がっていて、服を掛ける仕掛け。


展示室は撮影可能でした。
天井はグレーチングの床で・・・


上階に上がってグレーチング床からさっき居た階を見下ろします。


エレベーターの壁にサインが書かれています。
今は建築界で普通のデザインですが、当時は壁に字やイラストを直接ペイントする手法は見当たりませんでした。


階段を上がって行く動線で振り返るとなんと設計者のレム・コールハース氏の肖像画が。
美術館に設計者の肖像画が大きく掲げられているところを他で見たことはありません。それだけ偉大だという見方をされているのでしょう。さすが。


動線の最後は斜め床のホールを上から下りてくる形で結実します。
右の半透明の波板壁の裏へ入ると、入り口のあった部分にもどります。


斜めの動線が交錯する様子が分かる写真です。
「縦穴区画」なんて規制がある日本ではかなりお金をかけないと出来ないワザです。


クンストハルのある公園から200mほど徒歩で北上するとホーブ邸があります。
設計はファン・ネレ工場と同じブリンクマン&ファン・デル・フルーフトです。


裏手にある玄関ドア


こちらも同じブリンクマン&ファン・デル・フルーフト設計によるゾンネフェルト邸です。
現在はオランダ建築博物館別館となています。屋上になにかインスタレーションが乗っています。
ちなみに、ファン・ネレ社の重役の家だったそうです。同じ設計者という理由が納得。


ゾンネフェルト邸からニューウェ・マース川の対岸へ渡るためトラムの駅に向かって歩いていたら何故か「ガンダム」風の銅像が歩道に建っていました。


トラムの25番でニューウェ・マース川にかかるエラスムス・ブリッジを渡ってきました。
エラスムス・ブリッジはファン・ベルケス&ボス設計で1996年竣工手前の部分が大型船通過用に跳ね上げ式になっているそうです。


橋を渡ると、ボーレス+ウイルソン設計のフォリーみたいな空中回廊があります。
奧に見えるビルが2000年竣工レンゾ・ピアノ設計のKPNタワーです。


そしてこちらがエラスムス・ブリッジの跳ね上げ橋をコントロールする「コントロールセンター」です。
空中回廊の端にあります。ボーレス+ウイルソン設計で1997年竣工、この不安定な形が当時注目され、日本の建築家もさかんに引用したものです。2000年初期の日本の住宅でこの手の形をしているものの「祖先」にあたる建物と言えるのではないでしょうか。
当時海外雑誌を見てもコントロールセンターとだけ記載があったりして、「何のコントロールセンターだ?」なんて疑問でしたが、橋のコントロールでした・・・・・


さて、コントロールセンター前のトラムの乗り場から25番に乗ってさらに南下しキーフフゥク地区へ。
Rotterdam Randwegの駅で降りてグルーネ・ヒルレディック通りの西側へ坂を下りて行くと「キーフ・フークの集合住宅」が見えて来ます。1930年ごろ竣工した集合住宅で、298戸の公営住宅で設計者は市の住宅局に勤めていたJ・J・Pアウト


赤い玄関ドアと黄色い窓の縁取りが可愛らしいです。


キーフ・フークの集合住宅から再度トラムの25番に乗って24番に乗り継ぎしてMVRDV設計ののマーケット・ホールヘ移動しました。
ロッテルダムで一般の人に有名な建築と言えば地球の歩き方にも出ているツリーハウスですが、その前の広場に2014年に完成したのがこのMVRDV設計ののマーケット・ホールです。外側のU字型の部分は集合住宅で、門型の中は市場になっています。
アドレス:Dominee Jan Scharpstraat 298, 3011 GZ Rotterdam,


天井には一面に絵が描かれていて、ランダムに窓が開けられています。


率直にすごい建物です。日本では集合住宅を密閉された共用廊下で作るのは火災時への考慮から大変難しいので、このような構成はなかなか難しく、簡単に「真似」できません。


絵のアップです。


マーケット・ホールの接する広場です。つり下げられたキャノピーの下は地下鉄ロッテルダムBlaak駅のです。
その先にキューブハウス(ツリーハウス)があります。


ロッテ川の畔の古い港の開発計画で1984年に完成。
地球の歩き方などにも出ているオランダで最も有名な近代建築のひとつでしょう。
アドレス:Overblaak 70, 3011 MH Rotterdam,


人工地盤の中庭から見た様子です。


広場と反対側の様子。
広い道路ブラーク通りの上にまたがって建設されている様子がわかります。
日本だと道路をまたいで建築物を作るのは法的にハードルが高い方法ですが、広場と港を結びつける歩道橋兼集合住宅兼広場、といった建築になっていました。


ツリーハウスからトラムの25番で北上してロッテルダム駅の北側へ移動しました。そこにあるのがブリンクマン&ファン・デル・フルーフト設計の1934年竣工の集合住宅です。
設計者はファン・ネレ工場やホーブ邸・ゾンネフェルト邸などと同じ設計者です。
最寄り駅はロッテルダムSchlewegで1ブロック東側です。


可動式の庇がベランダの軒天に収納されています。改修はしているでしょうが、おそらくスチール製と思います。竣工から80年以上もたっているのに使用可能とは驚き。日本なら変なアルミの既成品にとりかえられてしまっている事でしょう。


低層棟がエントランスホールと郵便受け室になってました


内部には入っていませんが、ガラスにピッタリくっついて撮影させていただきました。
郵便受け室が右に見えます。地下があるようですが、ボイラー室か何かでしょう。

つづきはオランダ建築旅行その3

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