コラム

スペイン建築旅行

更新日:2019年3月20日


2017年9月にスペインのカタルーニャ地方とバスク地方の建築を見に出かけました。
建築設計者として、ガウディの作品は一度は見ておかないと。と思い、知人らと4人で出かけた「スペイン建築旅行」の旅行記です。

写真は東京羽田空港の国際線ターミナルです。大学の同級生がこのターミナルの現場監督を務めました。
日本橋が作られていて、「旅立ちは昔も今も日本橋」とあります。

さて、今回の行程は建築専門外の知人との合同の旅でして、カリカリの建築旅行とは一風変わった経路で巡ります。
バルセロナを目指すなら普通はバルセロナ空港(リカルドボフィル氏設計)入りしますが、フランスのモンペリエに入ってそこからレンタカーで移動する旅です。


写真はパリのドゴール空港のFターミナルです。
ここで国内線に乗り換えて、南フランスのモンペリエの空港を目指しました。


鳥取県の中海のように外が海で内側が湖になっているモンペリエの海岸線です。
この湖近くに空港があります。


モンペリエ メディテラネ空港です。ここでレンタカーを借りて、スペインとフランスの国境付近にあるホテルへ向かいました。
我々が予約したシトロエンを前のお客さんが乗って行ってしまい、あまっていたルノーに乗って出かけることになりました。「予約してるのにねえ〜」と文句言いながら出発です。


モンペリエの空港から車で2時間ほど走り、深夜にホテルに到着しました。フランスとスペインの国境付近の町「セレ」近くの宿で、Hotel Le Mas Trillesさんという小さな素敵なホテルでした。


宿泊した部屋の入り口です。カラースキームがフランスっぽさを出しています。


ベッドルームです。サニタリーの他にリビングもありましたので、大げさに言うとスイートルームという事ですね。田舎町ですから、そんなに高くないです。


朝食です。


こちらが我らのルノー号です。これに乗っていざ出発!


1泊目のホテルの近くで鉄橋を見つけ、見学してみることに。


クルマは通行止めで歩行者と自転車専用です。手前に石碑があり、何か歴史上の建造物の様子・・・


橋に解説の看板がありました。要約すると、この橋はエッフェル塔をを設計したエッフェルの会社が作った鉄橋で、スペインからフランスへ貨物鉄道を引いていた線路のために作られた。という物でした。アーチ型の開口の中が人道橋で、上部に鉄道が走る2階建ての橋だった模様。


1泊目の宿から出発して国境の町ポルト・ボウを目指します。写真は国境の看板。ダニ・カラヴァンの彫刻を目指して進みます。


赤の矢印が、目的地のポルト・ボウのダニ・カラヴァンの彫刻の位置です。国境線の上と下に鉄道の引き込み線が見えます。EU統合前はここで貨物の受け渡しをしていたのでしょう。


写真はフランス側の引き込み線の様子。フランス側の道路はガードレールがありません。スペインに入るとガードレールがあります。


ダニ・カラヴァンの彫刻が見えて来ます!

ダニ・カラヴァンはイスラエルの彫刻家で、この彫刻は1994年ごろ完成したヴェルター・ベンヤミンへのオマージュ作品です。日本にも作品があり、霧島アートの森や宮城県美術館、札幌芸術の森などに作品があり、高松宮殿下記念世界文化賞も受賞しています。


崖に突き刺さった鉄板の筒の中に階段がつくられています。


筒の先端には強化ガラスの壁があり、メッセージが刻まれています。
雑誌で見たことがありましたが、現地で体験するのは格別の思いです。


彫刻の横には「犬の糞のしまつをするように」とのプレートがありました。いずこも同じですね・・・


彫刻のある寺院 Capella del Sant Crist のパンフレットです。

ダニ・カラヴァンの彫刻を見た後はクルマでそのまま南下してRCR設計のベルロックワイナリーヘ向かいました。1時間45分ほどの道のりです。
アドレス V4J5+5C Vall-llobrega, スペイン

未舗装の田舎道をクルマで上がって行くとワイナリーらしい敷地の塀があり、ネームプレートを見るとベルロックワイナリーの文字ありです。
こちらがワイナリーのWEB http://www.fincabell-lloc.com/en/

敷地の奥に進むと赤さびた鉄板の列が見えて来ました。目的のRCR設計のワイナリー施設です。地下に向かって緩やかなスロープになっています。

鉄板のアップです。施設の人の説明によるとロシアの船を解体した材料を使用しているとの事。

内側からの見返しです。

内部には平場があり、外とつながった空間があります。屋根は波形に折れたコルテン鋼です。

ワインの試飲などを行う施設のようです。奥に向かってスロープは再び登りに転じて地上へつながります。

外から見るとガラスの室内が見えます。

案内を頂いた人が壁を押すと扉が開きました。

内部には鉄板で作られたシンクが窓ぎわにあり、室内でも試飲ができるようになっています。

案内頂いた様子。これも隠しスイッチを押すと自動で壁が開きます。ドアの作りが徹底しています。

隠しドアから地下のホールへ進みます。

地下のホールです。このほかに階段式のレクチャーホールもありました。

地上の構造物です。ここから地下に自然光を入れいました。

この地面の亀裂も採光のための穴のようです。人が落ちないように鉄筋が入っていますが、廻りに手摺りなどは無く、デザインに対して非常にストイックに作られている事を感じます。 設計者はともかく、ワイナリー側もこれを認めている訳ですから、度胸があります。日本ならかならず手摺りや転落防止のネットを付ける見たいな話しになってくるでしょう。

で、ワイナリーのワインを頂きました。ボトルラベルやコルクのデザインが素敵です。

こちらは2019年2月にTOTOギャラリー間で行われたRCRの個展で展示されていたベルロックワイナリーの模型です。これを見て、地下の動線が良く分かりました。現地では地下は理解ができなかったところもこれを見て納得。

羽田を発って、2泊目の宿は、バルセロナの中心から少々北あるホテルです。レンタカーを止めるパーキングがあるところを探したので、中心から外れた場所となりました。近くにはジャンヌーベル氏設計の超高層ビル「トーレ・アグバール」が見えます。

遠くにガウディのサグラダファミリアが見えます!

地下鉄の駅を目指して歩いていると、金色に輝く屋根を発見。近づいてみると・・・フィラ・デ・ベイカイレエルス・エンカンツ市場です。2013年に改装をしたとの事、設計はフェルミン・バスケスでバルセロナ最大の蚤の市を行う開催場。広々とした広場の地面には線状のライトが埋め込まれています。
アドレス:Carrer de los Castillejos, 158, 08013 Barcelona

金色の屋根が大変美しく、屋根下のサンクンガーデンになっている市場部分を軒天井に反射させて外部に見せるようになっているようです。

当日はノーマークだったので立ち寄らずに、バルセロナの中心を目指して地下鉄に。

2017年8月17日にテロのあったランブラス通りです。
我々が行ったのが9月でしたので、まだ通りは花束が捧げられ、大きなお花の山になっていました。
青いパトライトの警察車両が警戒にあたっています。

その先のレイアール広場で夜メシを食べました。
街灯が立っていますが、こちらはガウディがデザインしたとの事。
一見の価値ありです。

さて、夕食です。
味は良かったのですが4人中3人がムール貝にあたって具合が悪くなりました・・・・

この日は近くのガウディ設計のグエル邸の入り口を見ながら地下鉄に乗ってかえりました。

翌朝(バルセロナ2日目)です。朝のトーレ・アグバールタワーです。2005年に完成。バルセロナ水道局が所有しているとの事で水をイメージしたぬるっとした外観デザインが特徴です。
アドレス Avinguda Diagonal, 211, 08018 Barcelona, スペイン

近づいてみると・・・

電動可動式のガラスフィンが外壁に付けられています。パリのアラブ研究所も電動遮光ですね。ジャンヌーベル氏は電動式の遮光ファサードに力が入っているようです。

足元は地面との間に隙間を取っています。これだけ見ると免震構造のように見えますがカタルーニャ地方に地震があるのか?・・・

サグラダファミリアの見学予約をしてあるのでサッと外観だけ見てタクシーで移動します。

開門前に到着しました。結構並んでいて、数十人づつ門を開けて通しています。予約チケットには時間が指定してあって、我々は9時の回です。

GLから階段を上がったレベルに進み入館します。

圧倒的な高さの空間で複数建つ柱と天井の装飾が印象的です。

生物的なデザインを使っているところが他の教会建築と違います。
古典建築のような気でいままで見て来たのですが、今も建築中の現代建築なので、古い教会とは違ってあたりまえ。
でした。

建物側面のステンドグラスから入った光が彫刻された上部を七色に照らしています。但し、天井面にあるLEDと思われる人工照明が多すぎて、教会で感じる幻想的な感じが少したりないように思いました。

ホールの壁寄りのバルコニーのディテール。

平面図の立体模型がありました。この日の入り口は右手側の門からで、左の開口が出口として設定されています。同行した知人が数ヶ月後に仕事で再度訪れると入り口の設定が変わっていたそうです。工事中の教会なので、その時によって動線を変化させて工事に対応しているようでした。模型の中央の奥がキリスト像が天井から下がっている祭壇です。

キリスト像の廻りの照明はLEDならではですね。これ電球だったら交換が大変です。

さて、キリスト像の下がった祭壇の下の地下空間にはさらに礼拝堂があるようです。上部は観光的な礼拝堂で、ガラスの下に展開する礼拝堂は観光抜きで宗教として使っている礼拝堂の模様です。

出口側の開口の床には絵が描かれていて、その横には展示室があります。

展示室の様子です。

さて、礼拝堂から出ると、低層の付属棟がありました。一部に公衆トイレが入ってますが、内部は資料の展示室です。

これはさっきのキリストのモデルでは!

工事中の古そうな写真ですが、この付属棟がすでに写っています。現場小屋的な建築だったのかもしれません。

付属棟から出て見上げたサグラダファミリア。一旦出てから本体の地下にある工房とお土産コーナーを見ます。

礼拝堂の下階にある工房です。昔NHKで見た事がありますが、室内には3Dプリンターらしき物があります。この手の最新技術で工期が150年短縮された、という記事を読みました。

こちらはお土産コーナーのベタな一品。

サグラダファミリアを後にして次の見学地へ徒歩で移動。800mほど北上してサン・パウ病院を目指します。

サグラダ・ファミリアからの軸線上にあるサン・パウ病院に歩いて来ました。設計者はカタルーニャ音楽堂と同じリュイス・ドメネク・イ・ムンタネーでユネスコ世界遺産に登録されています。ガウディ設計と思い込んでいましたが、記事を書くにあたり調べ直して分かりました。サグラダ・ファミリアと違って、見学者は少なくゆった見て廻れます。チケットも予約無しでOK。
写真の正面の門を入って右側に見学コース入り口があります。敷地は写真手前から奧に向かって上がっていて、正面の階段を上がると2階であり、中庭のGLでもあります。

チケットを購入する地下ホールです。天井がヴォールト型で乳半色でとても綺麗です。

先へ進むと白い廊下に出ます。

天井にはガラスブロックの明かり取りがあります。この時点では何処にいるのかわからずでしたが、中庭の地下を進んでいることが後にわかります。

二股に分かれる廊下。プロジェクターで車椅子を押す看護師さんの動画が壁に投影されています。当時の様子を再現しているようです。

階段を上がって地上階へ出ると展示スペースです。

当時病棟に使われていた室内のようです。奥に当時の写真が大きく張られていました。

意外とゆったりとした当時の病室の写真。

この中庭の地下に・・・先ほどの白い廊下が隠されています。外部に出ずに、本館から各分館へ移動できるようになっています。


中庭に開いた地下への階段。

本館の様子です。ガイドツアーに聞き入る人達を撮影する女性を撮影。

天井の桃色が綺麗です。1910と記載がありますが、竣工年でしょうかね?ウイキペディアによると1902年から1930年にかけて建築されたとあります。

窓の外にはサグラダファミリアが見えます。

つづきはスペイン建築旅行その2

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