作品

住み手の感想

Y.SOHOに住み始めて1年

  • 2004年 東京都
  • 文:施主 Yさん
  • 敷地面積:
  • 延床面積:

石川さんの建築の良さは(って自分が住んでいる家しかわからないけど)、光と空気が巧く流れることだ。  日当たりや照明の配分だけじゃない。換気のことだけじゃない。もっとソフトな特徴。  たとえば白を貴重にしたぼくの家の中では、階段踊り場の灯りしか点けていなかったとしても、それが部屋の入口や階段などに漏れて、各空間の表情を作ってくれる。灯りのない場所にも、光が入ってくる。  丸くくり貫いた2つ天窓がもたらす部屋の表情も豊かだ。家族が寝静まった夜、寝付けなくて暗いリビングに出てきたとしよう。すると天窓から月の光が差し込んで、黒い床の上には青い鏡面ができている。  天上の月と床の鏡が放つ青い光は、リビング全体にうっすらと広がっていく。光も、空気と同じで漂うものなのだ。  雑誌やテレビでいろんな住宅が紹介されているし、見学会もあったりするが、こうしたことまでは暮らしてみないとわからない。光と空気がどう、家の中で動いてくれるのか。  今までぼくが住んだ家は、光も空気も動かなかった。電球はただ部屋を明るくし、南には日当たりがあった。廊下が家の中心を抜き、各扉が部屋を区切っていた。それが当たり前だと思っていたから、『Y-SOHO』での暮らしは実に新鮮なものだ。 空気の流れは、前にいた家で湿気に悩んでいたので、風の抜けのことは設計段階で素人ながら気にしていたし、実際この家は機能的である。  冬は一階床暖房の暖気が二階に上がってあたたかいし、夏の夜は二階のバルコニーを開けると、涼しい風が一階にも流れてくる。  しかしそれ以上の特徴がある。空気の流れがもたらす「気配」だ。それがこんなに大事なものだったとはわからなかった。  この家の住人は、ぼくら夫婦のほか犬が4匹と子どもが一人犬バカかもしれないれど犬も家族同然と考えれば、7人家族(!)である。家のどこにいても誰がどこでどうしてるのか、なんとなくわかるってことは、非常に大事なこと。  ぼくは家にいないことが多いから、こうした気配を感じられることが「わが家」にいる大きな安らぎだったりする。ぼくが早く帰宅しても、ヨメは仕事をしていることが多い。でも気配を感じられるだけで、気分はぜんぜん違う。  家を建てる前、ぼくはかっこよくて機能的なことばかりに目が行きがちだった。でも、それだけじゃなかった。家を建て、住んで、初めてわかったことだ。それだけじゃない「何か」があって初めて、家の個性と魅力が生まれるんじゃないか。  暮らし始めてもうすぐ一年。ぼくらが欲しかった「何か」を、石川さんはうまく汲み取ってくれたと思っている。


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「Y.SOHO」をご覧ください。

株式会社石川淳建築設計事務所 東京都中野区江原町2-31-13第1喜光マンション TEL 03-3950-0351