コラム

スペイン建築旅行2

更新日:2019年11月1日

2017年9月にスペインのカタルーニャ地方とバスク地方の建築を見に出かけた建築旅行記その2です。 カタルーニャ音楽堂を追記しました。

写真はサン・パウ病院から移動のために乗った地下鉄の改札前。訪れた日がちょうど「カタルーニャの日」という事で、カタルーニャの独立を願う市民が思い思いのスタイルで集会の会場へ向うところでした。

地下鉄からトラムのT3に乗り換えてWalden駅を目指します。

途中の車窓からはノーマン.フォスター設計のテレコミュニケーションズ・タワーが見えます。

見えて来ました!

トラムの駅を下りると道路の向こうにそびえ立つのがウオールデン7です30年ほど前、夜学に入って建築模型屋をしていた時に出向先のゼネコンに図書室がありました。そこでGA Architectのリカルド・ボフィール作品集をたまたま見て初めてこの建物を知りました。88年か89年だと思います。

あまりの衝撃的な形に魅了され、このGAを自分でも購入しました。いつか本物を見たいと考えていましたが、30年あまりを経てやっと訪問です。

見学は旅に出る前に公式ホームページから申込みを行い、現地で待ち合わせ時間にエントランス集合です。人数や名前をお問い合わせホームに入力するとメールが返って来ましたのでプリントして持参。住人さんがボランティアで案内をしてくれるとの事で、若干のお礼金を支払う段取りです。

アドレス:Ctra. Reial, 106, 08960 Sant Just Desvern, Barcelona, スペイン
URL: http://www.walden7.com/

設計者はリカルド・ボフィール氏。
バルセロナ出身で1939年生まれ。日本では川崎ラゾーナや原宿のユナイテッドアローズ、銀座の資生堂ビル、が彼の作品です。但し日本の作品はかなり割り切った感じで、基本設計程度しかやっていないように見えます。

まずは外観を見るため建物を一周しました。写真が多くて建築君以外の人はちょっと飽きてしまうかもしれません。すみません。

中央の縦長の開口がメインエントランスです。

裏側には公園があり、卓球台やテニスコートがあります。

コインランドリーが入っていました。

裏側には設計者のリカルド・ボフィール氏の事務所があります。タワーの部分はレストランになっている模様です。

パーキングにクルマが入っていくところを目撃です。

車庫のシャッターが「デ・ステイル」調です!


エントランスを入ると正面の青いシャフトの左右に施錠された両開きのドアがあります。
左の守衛室で予約したWEBのプリントやもらったメールを見せて、案内人を待ちます。

しかし、案内の人が午前と午後を間違えていて、表れませんでした。
結果、守衛さんに中には入れるように案内人さんが電話で段取ってくれて、自由に見て廻れることになりました。
逆にラッキーでした。

ロックのかかったドアの内側です。
室内のようですが、屋根は無いので屋外です。


こちらはエレベーターシャフトのある方向を見た様子です。
赤の扉がエレベーターの扉。

1階には詩的な空間が広がってます。幻想的で自然光が綺麗です。


こちらは集合ポストのある一角。郵便屋さんは守衛さんに入れてもらってここに投函する方式のようです。
ポスト前二は卓球台がありました。


こちらは地下1階のエリアで、乾燥室があったような記憶があります。

エレベーターに乗って上階へあがります。


内部の地図のパネルです。
各戸に自然光がはいるように吹抜と住戸が幾何学的に配置されます。

2階へ上がると人工地盤的な廊下があり、手すり壁の向こう側は1階のエントランスホールレベルを見下ろせます。

見下ろした様子。水盤と噴水の器機が中央に見えますが、水は張ってありませんでした。

見上げの様子。

エレベーターシャフト越しにエントランスの吹抜を垣間見られます。

高層部分の至る所に廊下を膨らませたアルコーブやコーナーがあり、住民のためのちょっとしたテラスになっています。
外観から察するに、各住戸にはバルコニーはありませんから、この共用廊下のコーナーが重要な中間領域になっているようです。


さて、ウオールデン7の上階から見える緑豊かな隣の建物・・・


アップの写真です。
こちらはウオールデン7の設計者であるリカルド・ボッフィル氏の設計事務所の建物「LA FABRICA」です。
コンクリートのシリンダー状の工作物をリノベーションして自身の事務所に改装してつかっています。緑豊かな屋上が特徴。

ちなみに、まさに「天空の城○○」に出てくる浮遊大陸で主人公の2人がグライダーで不時着する場所にそっくり、と思えないでしょうか?
アニメの公開が1986年で、このボフィルの事務所とウォルデン7がGAドキュメントで日本に紹介されたのが1985年です。
もしからしたら、この造形からインスパイアされてアニメの背景画が作られたのかも、と思わずにいられません。


こちらがGAドキュメント


地上に下りて、エントランス廻りを拝見しました。


大きなアーチが入り口で、左の小さなアーチが連なったところの中は応接室のように見えました。
ここから先はプライベートでしょうから、立ち入りもここまでとして、次の建築へ移動です。


ウオールデン7からタクシーに乗って、コロニア・グエル地下聖堂へ移動しました。
グエル公園の施主である E.グエルの紡績工場の労働者住宅団地のために計画された教会で、「地下聖堂」とありますが。実は地上で、人工地盤の下に作られたように見受けられました。

設計はもちろんアントニオ・ガウディ。
アドレス: 927H+H4 La Colònia Güell, スペイン
入場チケット売り場が建物から100mほど離れた町中にあります。


境界のエントランス前のポーチ部分です。半層下がって境界があり、境界の天井上が人工地盤になっています。


教会の中の様子。


家具のデザインもガウディらしい!


屋上の人工地盤上です。
本当はこの上に教会が建ち上がるはずだったとの事ですが、サグラダ・ファミリア教会の設計依頼に専念するため、この計画を弟子に任せたとの事。


駅に向かって歩いていると、工場がありました。
これがグエルさんの工場か???


コロニア・グエル駅からバルセロナへ向かいました。


この日の移動地図です。ウオールデン7からタクシーでグエル地下教会へ移動し、鉄道でエスパーニャ広場(スペイン広場)へ移動しました。


地下の駅から地上へ出るとスペイン広場ごしにArenasショッピングモールが見えます。


元闘牛場で、リノベーションの設計をリチャード・ロジャースが行っています。内部は超近代的で見所満載なのですが、この時はノーマークの上時間も無くてスルーしております。
目指すはバルセロナパビリオンです。


建築君の聖地のひとつ、バルセロナパビリオンです。設計は言わずと知れたミース・ファン・デル・ローエ。
1929年のバルセロナ万博でドイツ館として建築され、会期終了後に取り壊されましたが、復元され「ミース・ファン・デル・ローエ記念館」となっています。
大学に入って設計製図の授業の初期の頃に初めて知った建物ですが、構成のシンプルさには今でも参考になる作品です。

日本人学生と思われる建築君達が見学していました。

水盤の右を進み突き当たりを右に曲がるとお土産などを売っている売店があります。


左が売店入り口です。
水盤の裏側は緑地となっています。


売店内に飾られているスチール柱のカット部材です。 完成時のオリジナルの柱なのかもしれません。


大理石貼りの壁の端部ですが、石の柄が側面と断面とつながっているのを見ると、端部だけ無垢の塊をつかっているようです。


両開きのドアの先の彫刻のある水盤へすすみます。ドアはありますが、バルセロナパビリオンに仕切られた個室は無く、すべて外と気積がつながっています。


水盤まえから見返し


ガラスごしに見える黒いセブンチェアは入場券を売っている女性が座っているものです。
日本ならキップ売り場のカウンターをどこかに作りそうですが、ここでは椅子だけ置いて、女性が1人座っているというシンプルなものです。


バルセロナパビリオンからモンジェイックの丘を登り、1992年に行われたバルセロナオリンピックの会場を見に移動しました。フェンスがありますが、開門していて自由に入れました。シンボルタワーはサンティアゴ・カラトラヴァ設計。1992年といえば90年に大学を卒業して設計事務所へ就職したはいいものの、バブル崩壊のため担当している設計計画がどれも中止になり・・・といった頃でした。テレビ中継で映し出されるオリンピック競技施設が輝いて見えました。いつか見に行きたいと思っておりましたが、25年後に見に来られました。

タワーの足元です。オリンピック当時のメディアで見るのはタワーの上方の造形が多かったです、そのため、足元のディテールはよく見るのは初めて。貝のような造形の上にタワーが建っていました。

貝のように見える基壇の廻りは水盤になっているようで(水は張ってありませんでした)白のタイルが貼られて、ガウディのグエル公園の引用かもしれません。

遠くに磯崎新氏設計の室内競技場パラウ・サン・ジェルディが見えました。

バルセロナオリンピックの会場を後にして、おなじみの観光地であるグエル公園へ向かいました。地下鉄のLesseps駅から歩いて向かいました。写真が正面です。

有名な大階段です。

お約束のカメレオンの彫刻です。

さて、グエル公園はグエルさんがここに住宅地を分譲する計画を立て、そのための広場を作ったのが、このグエル公園との事。モザイク貼りの彫刻だけが有名ですが、建築的見所は「人工地盤」だという事です。写真のように広場は斜面地に柱を立てて張り出しています。

こんな感じで人工地盤の下へ進みカメレオンのある大階段へつながっています。

地盤を支える列柱です。建築君にはこここそが見所です。

軒天井面もモザイクタイル貼りで、球状の形で力を逃がしているのがわかります。

上部の広場からの景色です。
サグラダファミリア教会と海沿いにある超高層ビルの対比が美しい夕暮れ時でした。このあと、近くで夕食を取ってホテルへ帰りました。

さて、バルセロナ3日目はカサミラの見学予約と、カタルーニャ音楽堂の見学予約を入れていました。
地図は、中央駅、エンリックミラレス設計の市場、カタルーニャ音楽堂、カサミラ、カサパトリョの位置関係を書いてます。


まずはカサパトリョを外から一見して、カサミラへ急行しましたが、午前が雨。カサミラは屋上が見所のため、雨が止むまで他を見る事にして、タクシーを拾って中央駅へ移動しました。


カッコいい姉さんがドライバーさんです。


サンフランサ駅(バルセロナ中央駅)です。現在では市街地中央で地下にあるバリセロナ・サンツ駅がいわゆる中央駅と呼ばれていますが、こちらの方がバルセロナの海側端っこにあり、昔ながらの中央駅です。
3つのアーチ形の入り口が印象的で、以前から洋書で見ていたので是非本物を体験したいと考えていました。


アーチ開口を内側から見ます。


3つの大きなドーム型をつなげたような大空間があり、端部にレストランが入っています。


正面の入り口を入るとホームです。


ホーム側はガラスアーチ屋根のアトリウムになっています。


柱脚の足元ディテールです。オランダのアムステルダム駅の柱脚を思い出します。


サンフランサ駅から歩いて8分ほどで、サンタカテリナ市場へ。
バルセロナで市場と言えば、ブケリア市場が有名で観光地化していますが、建築君が見るべきはこちらの市場です。改修の設計がエンリック・ミラーレスで2005年に工事が完成しました。
2009年発売のエルクロッキーの144号に出ていますが、着工は1997年で工事中遺跡が出たため竣工まで時間がかかったとの事です。


元々あった建築のファサードを残し、それを被うように波立った屋根を軽快に架けたデザインです。


こちらは裏手側ですが、サンフランサ駅側ですので、我々はこちらから入りました。この裏手側には、工事中に発掘された遺跡の保存エリアがあり、見学もできます。


遺跡の保存コーナーです。


波立った屋根は木造で、それを串刺しに鉄骨の梁が貫通しています。雨が漏りそうですが、大雨も降らないお国柄なのでしょう。


市場の中は地元の人が買いに来るような雰囲気で落ち着いています。有名なブケリア市場とは対象的です。


市場を後にし、徒歩で200mほど移動して世界遺産のカタルーニャ音楽堂へ。
1908年竣工のカタルーニャ合唱団の本拠地として建築された音楽堂で、この写真の側が元々の建物の正面エントランスです。
現在は次の写真の側面の長手側に近代的に改築されたメインエントランスがあります。


左のシリンダー状の部分の1階にチケット売り場があります。事前にWEBでチケット予約して紙プリントを持参し、本券と交換をしてもらって集合場所の建物内のカフェへ。


ガイド係の女性に着いていくと、まずは上階の客席から見学です。


装飾の凹凸の寄与か、音響特性も良いそうです。右奥が舞台です。
昔の音楽堂ですから、当然自然光を入れるために窓が多く、天井には象徴的な天窓のステンドグラスが下がっています。


客席横の通路の壁装飾


こちらも階段席のサイドの通路。
開口をくぐると階段室へつながります。トーン記号の手摺りが可愛らしいです。


音楽堂を見た後お約束のカサミラに移動しました。午前の雨模様から一転して晴れ空の元。
午前に入場しなくて良かったです。

言わずと知れたガウディの代表作の集合住宅です。ちなみに、地元バルセロナでは「ラ・ペドレラ」と呼ばれているそうで、石切場を意味するそうです。
1910年完成ですから日露戦争の頃です。


建設当時の構成は1階が店舗やオフィスで2階がオーナー住居、その上が賃貸住居だったそうです。


入り口の門でネットで予約したEチケットを見せて入場。この日はならんでいる人も居なかったので、ネット予約も必要なかったですが、買っていった方が安心。
我々は何時でも並ばす入れるちょっと高めのチケットを買って行きました。
写真は入場した空間の見上げ。カサミラには2つの大きな中庭と小さな光庭が6箇所ほどあり、この場所は最大の中庭の下です。この庭に面して、各戸の窓も開いています。


見学コースは何種類かありますが、我々は屋上の他展示住居も見られるコースにしました。
エレベーターで一気に屋上に通される展示コースです。
屋上は起伏が激しく、感激よりも「防水どうなってるんだ?」と実務的な疑問が勝ちます。


転落防止のネットフェンスが1.4mほどの高さでありますが、竣工時にあったのかどうか? 手に汗握ります。


見下ろすのはさっき入って来たエントランスの中庭です。


さて、こちらは、屋上の直下の屋根裏スペースです。
レンガのような薄い構造体をアーチ型に積んで屋根を形成しています。室内はガウディ建築の展示スペースとなっています。


カサミラの小屋組模型です。
アーチ型の躯体が列をなして作られています。


横にあったヘビの骨格標本です。
ガウディはこれを参考に構造設計をして行ったようです。


上層階の展示住宅内です。実際に住んでいる人も居る共同住宅ですが、見学コースには展示住戸が用意されています。


リビングの再現空間


サニタリーも再現されています。(再現というか、保存ですね)

有機的な間取りなので、平面的には変形した部屋が多く、サニタリーも台形で広々した中に浴槽を納めてあります。

つづきはスペイン建築旅行その3

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